醤油の素・もろみは自社製造の証
若竹のものづくりを伝える、伝統調味料の開発
- 若竹醤油 有限会社
- 福岡県久留米市田主丸町田主丸709
- ■代表者: 林田 武
- ■創業: 明治32年
- ■計画承認日: 平成30年11月30日
- ■TEL: 0943-72-2818
徹底した自社製造で守る、昔ながらの製法
「若竹醤油有限会社」の創業は明治32年、林田栄太郎商店として、その歴史をスタートさせた。江戸から続く老舗・若竹屋酒造の分家として、日本酒と同じ麹菌を使う醤油・味噌の醸造に乗り出し、モノやノウハウなどを受け継ぎながら独立した。
若竹醤油では、「天然醸造長期熟成」という昔ながらの製法を今に継承。創業当時の製法を、そのまま実直に守り続けている。
若竹醤油はすべての製造工程を自社で行う、県内でも珍しい醸造元だ。
若竹こだわりの醤油づくり
醤油づくりの始まりは小麦や大豆
県内の多くの醤油メーカーでは、協同で製造した「生揚(きあげ)醤油(諸味を圧搾したもの)」を仕入れ、それに熱処理や味付けを施すことで、独自の醤油として売り出している。
しかし、若竹醤油が仕入れるのは、「生揚(きあげ)醤油」ではなく、小麦や大豆といった醤油の原料。小麦を煎り、大豆を蒸して、麹を作り出す。その醤油づくりの一番最初から、若竹醤油ではすべての製造工程を自社で行っている。
出来上がった麹は通常より長めに手間をかけることで、味に重厚感やコクが出る。さらに、麹に食塩と仕込水を加えれば、醤油の素となる諸味(もろみ)の出来上がりだ。
天然醸造の長期熟成
一般的に大手醤油メーカーでは品質を安定させるため、諸味(もろみ)に酵母や乳酸菌などを添加して発酵を促す。
しかし、若竹醤油はそのような人為的な添加を行わず、蔵に棲みついた酵母や乳酸菌で発酵させる。若竹醤油の長い歴史の中で、蔵自体に菌が棲みつくようになり、放っておいても自然と発酵が進む。これが「天然醸造」というわけだ。
さらに、大手メーカーの発酵期間が半年〜1年ほどであるのに対し、若竹醤油の発酵期間は夏を3回越える「三夏(みなつ)熟成」。時間をかけることでカドがとれて丸くなり、味に調和が出ると言う。
経営革新計画を策定してみようと思ったきっかけは?
原点にあるのはもろきゅうです。でも、もろきゅうだけじゃもったいないなと。10年ほど前から蔵開きの時にもろみを販売していて、年配の方からは「懐かしい!」という声が寄せられていました。「ごはんにのせても美味しい」とリピーターになってくださる方もいて、お客さまの反応は上々でした。それで、もしかしたら需要があるかもしれないと思ったのがきっかけです。
経営革新計画の内容
Q. 新商品の概要と、その新規性を教えてください。
今回の経営革新は、しょうゆもろみを原料とした「発酵調味料」の商品開発および販路開拓です。醤油の素となるしょうゆもろみは殺菌処理をしておらず、菌が生きている状態です。これを今流行の発酵調味料として開発しようと考えています。
うちは醤油をイチから製造しているので、もろみを自社調達できます。しょうゆもろみを原料とする商品は、自社で醤油を製造している醸造元にしかできない商品だと思っています。
もろみには、小麦や大豆の粒が残っています。これをどこまでペーストにするかなど、お客さまの嗜好に合わせた商品を開発するつもりです。うちは田主丸を中心に久留米市、星野村やうきはなどを商圏とし、飲食店や個人宅に商品を直接お届けしています。お客さまと顔を合わせて売るので、お客さまの声を聞くのは得意なんです。
しょうゆもろみの発酵調味料ができれば、これまでにないまったく新しい調味料になります。レシピや調理法を提案しながら、お客さまのニーズを掘り起こしたいと思っています。
Q. 将来の展望は?
最近では塩こうじや甘酒などのブームもあり、日本古来の発酵食品の良さが見直されてきています。既存顧客へはもちろんですが、ネット通販の「よかもん市場」や、福岡のアンテナショップ「DOCORE(どぉこれ)ふくおか商工会ショップ」などに出展して、この商品から若竹醤油を知ってもらいたいと考えています。
もろみは醤油づくりの原点。もろみがあるというのは、自社製造の証です。そういう商品を作ることができるということを通じ、若竹醤油の「ものづくり」を知っていただきたいですね。
経営革新計画を策定してみていかがでしたか?
Q. 策定期間中、どんな支援を受けましたか?
新商品の開発に当たり、いろいろな人を紹介していただきました。相性なども考慮して、専門家の先生を探してくれたり。
販売などを指導してくれた専門家の先生は、一緒に電卓を叩きながら、単価設定など細かい部分まで相談にのってくださいました。6次化を支援する先生からは、具体的な販売計画やターゲットの明確化などについてお話がありました。
自分の中で不足していた点や、あやふやになっていた点などを指摘してもらい、詰めるべきポイントが分かりました。
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若竹醤油の味を支える厳選素材
うちは製法だけでなく、原料もこだわって厳選しています。大豆や小麦は福岡県産ですし、水も田主丸の地下水を使っています。塩はオーストラリア産ですが、こちらも海水から作った天日塩です。
厳選素材に、創業以来の伝統技。昔ながらの製法で、醸造微生物の力を存分に引き出し、若竹醤油ならではの味や特長を継承しています。
手間とコストを惜しまず、誠実に醤油をつくる
一般的に大手の醤油メーカーさんでは安定した発酵を行うため、酵母や乳酸菌などの菌のアンプルを加えます。しかし、うちでは人為的な添加をせず、すべて蔵に棲みついた、いわゆる「蔵付きの酵母や乳酸菌」で発酵させます。
そのうえで温度管理もしていません。この醸造方法を「天然醸造」と言います。日本の四季に合わせた、昔ながらの発酵です。
もちろん猛暑や冷夏の影響を受けることもありますが、「三夏熟成」をすることで、ばらつきを抑え、安定して同じ味の諸味を作ることができます。
お客さまの声に真摯に向き合う
うちには今、濃口醤油だけで10種類あります。サザエさんの三河屋さんを想像していただくと分かりやすいのですが、うちはお客さまの元に直接、商品をお届けしています。お客さまと顔を合わせるので、要望をいただく機会が多いんです。皆さまの声にお応えしているうちに、商品数が増えていって。
濃口醤油のほかにも、淡口醤油が5種類、さしみ醤油は4種類あります。「甘いのが良い」「色が薄い方が良い」など、お客さまのいろんな声を取り入れています。