九州に瑛鳳堂あり!京仕込みの技で手掛ける 寺社仏閣の修復から、一般住宅のリフォームまで

瑛鳳堂
福岡県久留米市田主丸町豊城1585-2
■代表者: 坂本 栄
■創業: 平成17年6月1日
               
■補助金採択日: 令和1年8月30日
■TEL: 0943-72-0109
             
■支援内容: 小規模事業者持続化補助金

文化財を守る表具師の技

「瑛鳳堂」の代表を務める坂本さんは、寺社仏閣の内装を手掛ける表具師。金紙貼りや掛け軸・屏風・襖の修復などを行い、歴史ある文化財を後世に伝えている。
坂本さんが表具師として修行をしたのは京都。千年以上の繁栄を極めた古都には、多くの文化財が今なお残り、表具師らに伝わる技術もまた他の追随を許さない。本格的に文化財の修復ができる表具師は九州には珍しく、とくに「金紙貼り」の正しい技術と知識をもっている人は、少ないらしいとのこと。
また、襖の張替え・修復・彩色など、通常は分業制で行われるこれらの作業を、坂本さんは一人ですべて担当する。たまたま坂本さんの修行先が、京都でも珍しくすべての作業を手掛けていたのだ。さらに、大学では絵の勉強もしていた坂本さん。京都の絵師には敵わないが、簡単な装飾なら一人でこなす。まさに八面六臂の大活躍だ。

デザインと機能性を両立する吉鳳紙

伝統ある文化財を見てきた坂本さんが、今の時代に向けて考案したのが、瑛鳳堂の「吉鳳紙(きっぽうし)」。日本古来の装飾技術を用いて作った、瑛鳳堂のオリジナル和紙だ。胡粉盛り上げの技法など、表具師ならではの技術を駆使して、趣のある和紙に仕上げている。
昔の柄をそのまま使うのではなく、デフォルメしたり、柄の配置を工夫したり…。余白を生かした、モダンなデザインが現代にもマッチする。
吉鳳紙の特長は、デザイン性だけではない。吉鳳紙に使われる和紙や顔料にはチタンをベースに化石サンゴの粉末や竹炭など坂本さんが厳選した素材をブレンドした、体に優しい接着剤を使用する。
ホルムアルデヒドなどアレルギー物質を抑制するチタンと、消臭・殺菌作用をもつ竹炭、そして美しい環境で育った化石サンゴ。自然素材がもつ様々な機能を生かした吉鳳紙は、空間だけでなく空気を浄化し、環境を改善する究極の和紙なのだ。




補助金の活用について教えてください

補助金事業について
吉鳳紙をつかって、一般住宅のリフォーム事業を開始しました。瑛鳳堂の仕事はほとんどが寺社仏閣に関する内装作業で、取引先も寺院や公共機関がほとんどです。そこで、新たな取り組みとして、壁紙として吉鳳紙を使用する、一般住宅のリフォームを提案しています。和紙は扱うのが難しいので、瑛鳳堂らしいサービスだと思っています。
プラスチック素材を主原料としたクロスと違い、和紙である吉鳳紙は環境や壁の状態を見ながら、1枚1枚手塗りしないといけません。そのぶん和紙には、通気性・伸縮性・耐久性といったメリットがたくさんあります。何よりも、太陽光が差したときの光の反射や照りが違います。肩の力が抜けて、温かみを感じていただけると思います。
また、うちでは液状化したチタンに自然素材をブレンドした接着剤を使います。チタンには消臭のほか、湿度・温度の安定や、化学物質の抑制が期待できます。いろんなメーカーがチタンを扱っていますが、いくつもお取り寄せして、自分たちが一番効果を感じられたものを選びました。
補助金を使って、A4判8ページのパンフレットを制作しました。メインは吉鳳紙によるリフォームを紹介し、最後に表具師としての技術も掲載しています。パンフレットはお客様である寺院の休憩所に置いてもらったり、知り合いのお店など、人が集まりそうなところに置いてもらったりしました。おかげでパンフレットを見た方からお問合せがあり、吉鳳紙を使ったパネルやオリジナル襖の注文や茶室の全面リフォーム等の受注があり、仕事の幅も広がってきました。

実際にリフォームを手掛けて
茶室のリフォームとは別に、うどん屋さんの内装も手掛けました。表具師は下地の調整や襖・額の仕立て等で木材を使うので、こちらは壁紙だけでなく、床やテーブルに至るまで、内装のほぼすべてを任せていただきました。
床やテーブルなど、木材のすべてにチタンをまぜた蜜蝋を塗り込んだのですが、その消臭効果はすごかったですね。もともと倉庫だった場所を改装したため、倉庫の匂いがけっこう残っていました。お風呂場もあったので、ちょっと空気が澱んでいた。それが、リフォーム工事中にどんどん匂いがなくなって、空気が浄化されていくのが分かりました。
もともと店舗の半分だけ担当する予定だったのですが、途中でオーナーさんに全部リフォームしてくれと言っていただきました。オーナーさんも、吉鳳紙が生むキレイな空気を感じてくれたのではないでしょうか。

時が経つほど満足度が向上する

佐賀城本丸歴史館の襖の修復を手掛けたことがあります。京都に問い合わせをされたそうですが、九州で修復ができる職人ということで、私を紹介していただきました。一般の襖と本式のものとは材料からして違います。下地の他に、和紙が7〜8層重ねられていますが、すべて種類がちがって、すべてに役割があります。その構造を知っておかなければなりません。
仕事をさせて頂いたお客様から、次の仕事をご紹介いただくこともあり、一つの仕事がつなぐ御縁にありがたみを感じております。「時が経つほどに良くなる」と言っていただけた時は、本当に嬉しいですね。

歴史に寄り添う修復を…

文化財の後ろには、重ねてきた悠久の歴史がある。たとえ色褪せた文化財でもどこか厳かに見えるのは、文化財がまとう歴史の重みなのだろう。
そんな文化財を修復する表具師には、技術とセンスが求められる。修行で技術は磨けても、センスは職人一人ひとりの価値観に基づく、意識の問題になってくる。そこで坂本さんが一番大切にするのが、調和。本堂全体を見渡したときの調和が一番大事だと、坂本さんは言う。
技術的には可能でも、その一歩手前で留めておくセンス。その加減を学ぶため、日々の経験と探求心が必要となる。
個を主張し過ぎず、全体の調和を大切にする心。それは、一流の技術を持ちながら物腰が柔らかく、常に笑顔を絶やさない、坂本さん自身を反映しているようだ。

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