小松菜が甘い!? 有機栽培で育てる美味しい野菜 田主丸の人々に直接届ける八百屋をオープン

田主丸フーズ
福岡県久留米市田主丸町以真恵388-1
■代表者: 馬渡 義行
■創業: 平成21年1月1日
               
■補助金採択日: 令和1年8月30日
■TEL: 0943-73-3084
             
■支援内容: 小規模事業者持続化補助金

夫婦でイチから始める野菜づくり

代表の馬渡さんは、三十歳を迎える節目の年に勤めていた会社を辞めて、農業の道に進んだ。かねてより「自分で何かをやりたい」と考えていた代表と、野菜づくりが好きで家庭菜園を楽しんでいた奥様。二人が興味をもって取り組めるのが、農業だった。
興味があると言っても、当時の二人は農業に関してまったくの素人。最初から順風満帆というわけにはいかず、農業普及センターに話を聞きに行ったり、近所の農家の方々に話を聞いて周ったり…。試行錯誤をしながら、低コストで始められる野菜の栽培から取り組んでいった。それが今では、ほうれん草や小松菜などの葉物野菜を中心に、20種類ほどの野菜を栽培するまでに。夫婦で始めた農業は着実に成長し、現在は4名の従業員とともに、開業当初の4倍となる4ヘクタールもの農地を耕している。

美味しい野菜の秘訣は土づくりと有機肥料

1年目から収穫はできたものの、固かったり、苦かったり、美味しい野菜には程遠かった。そこでまず2人が取り組んだのが、土づくり。土と言ってもアルカリ性や酸性など、地域によってその特徴は様々に異なる。そのため近隣の農家の方々に、この地域の土壌に関することを教えてもらい、それを一つずつ実行していった。その地道な努力が実を結び、3〜4年後にようやく、自分たちで納得のいく美味しい野菜を収穫できるようになった。
田主丸フーズの一番の特長が、有機肥料による体に優しい野菜たち。葉物野菜を栽培するビニールハウスの中は、すべて有機栽培。鶏フンをベースに様々な飼料の配分を業者に指定し、オリジナルの有機堆肥を作ってもらっている。この有機肥料をビニールハウス全体にまくことで、耕した時に土がふかふかになるのだと言う。ビニールハウスの土は雨に打たれることがなく、養分が外に流れ出ることがない。そのため年々、ビニールハウスの土壌は改良され続け、野菜の質が上がるだけでなく、収穫量も安定している。




補助金の活用について教えてください

国道210号線沿いに、自分たちで栽培した野菜を販売する直営店をオープンさせました。今まではスーパーやJA、道の駅や飲食店に卸していましたが、田主丸フーズの美味しい野菜を、地元・田主丸の人たちにもっと知ってもらいたいと思って始めました。地域に密着した、農家発の八百屋です。
今までも卸先から「田主丸フーズの小松菜はありますかってお客さんに聞かれるよ」などと、声をかけていただいていました。直営店を持つことによって、そういうお客様の声を直に聞くことができるのが嬉しいですね。「小松菜が出たから買いに来た」。「ブロッコリーが出たから買いに来た」と、それぞれの野菜にお客様が付いてくださっているのが分かります。お客様の声を、今後の野菜づくりにも生かして行きたいですね。

補助金の活用法は?
お店では野菜だけでなく、スムージーの販売もしています(夏季のみ)。そのスムージーを作るための業務用ミキサーを補助金で導入しました。業務用というだけあって、粉砕力が一般のものとはまったく違います。うちの小松菜はもともと甘くて柔らかいのが特長ですが、業務用ミキサーで小松菜のスムージーを作ると、繊維質をまったく感じません。小松菜のほか、バナナやパインジュースも作っていますが、素材を小さく分解してくれて、口当たりの良いジュースになります。
業務用ミキサーのほか、補助金を活用してお店の幟(のぼり)を作ったり、オープン時のチラシを作成したりもしました。オープン時にはほうれん草のプレゼントを行ったのですが、おかげさまでたくさんのお客様に来店していただきました。

規格外野菜が喜ばれる

個人のお客様とスーパーの一番の違いは、規格外野菜に対する反応です。スーパーでは、規格外野菜は敬遠されます。見栄えの問題だけでなく、たくさんの野菜を扱うスーパーでは、大きさがバラバラだと運ぶのが大変なんです。
でも、一般のお客様はスーパーとは真逆の反応です。「うわっ!大きい!」「これ、この値段で良いの?」と、喜んでくださいます。規格外野菜と言っても、別に傷んでいるわけではなく、ただ大きすぎるというだけ。「同じ値段なら大きい方が良いわ」と言ってくださる方がほとんどです。
これまでは規格外野菜は廃棄するしかありませんでした。でも、こだわって作った野菜なので、なるべく廃棄したくない。卸だけでなく、個人のお客様と直接つながることで、規格外野菜のロスをなくすことができました。

先人から学び、農業を楽しむ

田主丸フーズで一番の人気商品は小松菜。苦味がある小松菜は、葉物野菜の中では決して食べやすい野菜ではない。しかし、お客様からは「子どもが田主丸フーズの小松菜だけ食べられる」と言われることもある。
秘訣はやはり、無農薬栽培。田主丸フーズの小松菜は、「ふくおかエコ農産物」にも認定されたお墨付き。やわらかくてほのかに甘く、繊維やクセがないのが特長だ。
素人だった2人が「ここの野菜なら食べられる」と言われるほど、美味しい無農薬野菜を栽培できるまでに…。農業を始めたとき、何か問題が起こった時、2人をいつも助けてくれたのは、近所の農家の方々だった。「近所のおじいさん・おばあさんに全部、教えてもらいました」と、奥様。30代という若さで農業の道に進み、全力で農業に向き合う馬渡さんご夫妻。そんな二人が、農家の人々の目に微笑ましく映ったことは想像に固くない。素直に先人の知恵を借り、農業を楽しむ。二人の農業に対する姿勢が、田主丸フーズの美味しい野菜を生み出している。

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