左官技術を生かした新たなエクステリアサービスを提供
- 古賀エクステリア
- 福岡県久留米市田主丸町秋成342-2 松原ビレッジD棟
- ■代表者: 古賀 健太郎
- ■創業: 平成15年1月1日
- ■計画承認日: 令和3年2月16日
- ■TEL: 0943-72-3673
高度な左官技術と誠実な顧客対応が評判
「古賀エクステリア」の代表を務めるのは、左官職人として15年の経験を持つ古賀健太郎さん。エクステリアとは、屋外建造物にある門扉やアプローチ、塀、フェンス、車庫、庭や植栽などの建物周辺の屋外設備や外装の総称だ。職人でもある古賀さんは、鏝(こて)を巧みに使い、土やセメント、モルタルなどで建物の壁や床、天井などを塗り仕上げる左官技術の高さと誠実な顧客対応は業界内でも高い評価を得ている。その評判を裏付けるように、2013年にエクステリア業者として独立開業後には、以前勤務していた会社や施工を担当した顧客から仕事の依頼が続き、受注している9割が紹介案件。その中には有名メーカー企業からの発注も含まれ、紹介率とリピート率の高さが古賀さんへの信頼を物語っている。
しかし、コロナ禍による不況の影響で仕事の大半を占めていた業者やメーカーからの発注が大幅に減ることとなる。だが一方で、「おうち時間」の増加など、人々の生活が変容したことがきっかけとなり、一般消費者から住居周りのエクステリアやリフォームに関する依頼や問い合わせが増えた。今回、3D CADを導入した背景には、このような一般消費者からの受注を増やし、新たなステージに上がりたいという狙いもあった。
デザイン性と実用性を兼ね備えたエクステリアを
デザイン性と実用性を兼ね備えたエクステリアをトータルで手掛けたい、そんな想いから独立を決めたが、確かな技術と信頼の厚さゆえ、元請けからの施工依頼が多くを占め、古賀さんもその期待に応えたいという思いがあった。しかし、図らずもコロナ禍の影響で一般消費者からの依頼が増えつつある。これら一般消費者から寄せられた案件を確実に受注するためには、業者向けの本格的な設計図ではなく、一目見ただけで完成イメージが想像できる3D CADを用いた立体イラストが必要不可欠となる。
完成イメージがあることで、顧客とのイメージの共有ができるようになり、対面でなくともメールベースでの打ち合わせもスムーズに行えるようになった。さらに、施工中や完成後の修正・やり直しのリスクを避けるメリットもあるという。あらかじめ納期が決まっており、天候等で作業日数が限られる現場では、イレギュラーの対応は作業者にとって大きな負担となる。3D CADの導入により、顧客と業者間で円滑なコミュニケーションが計れるようになったことで、より一層の品質向上と作業の効率化が見込めるようになった。
経営革新計画・補助金申請をしてよかったことは?
設備導入と自身のスキルアップ
今回の補助金を利用して、3D CADの本格導入と新しいパソコンを購入しました。新規で一般住宅のエクステリア案件を増やしていくには3D CADを使った提案は必要不可欠です。3D CADに関してはこれまでも講習会に参加したり、詳しい同業者に教えてもらったりしていましたが、今回の申請を機により高い操作技術力を身につけようと思い、実践的なスキルが学べる講習会に参加をしました。設備導入と同時に、自身のスキルアップにも役立てることができてよかったと思います。
申請に必要な提出書類については、私は現場に出ていることが多いので、日中は家族に対応をお願いしました。申請書の記載方法など、田主丸町商工会の担当者の方にサポートをしていただきながら仕上げたと聞いています。これまでも利用できる制度がある時は情報をいただいたり、相談に乗ってもらったりしており、本当に助かっています。また、申請書を作成するにあたり、今後の事業について客観的にやるべきことを整理できたのもよかったと思っています。
3D CADを導入して期待することは?
イメージの共有で打ち合わせがスムーズに
3D CADを使用することで仕上がりのイメージを立体でわかりやすく視覚化できるので、お客様との打ち合わせがスムーズになります。門扉の素材や色や、植木の有無だけでも随分とイメージが変わりますから。打ち合わせの段階でしっかりとイメージ共有をすることが大切です。
他にも、見積もり金額の調整も仕上がりイメージと合わせて提案できるのも良いです。例えば、お客様からもう少し金額を抑えたいという要望があり、植木の本数や玄関までのアプローチデザインで調整する場合、「ここがこうなります」とイメージ画をお見せすることができます。逆に「ここをこのようにできますよ」とプラスの提案もしやすくなります。完成イメージを見ながら、仕様変更するのか当初のままで進めるのか、お客様にじっくり考えていただき、すべて納得したうえで発注していただけるので安心です。
コロナ禍を乗り越えて新たなステージへ
左官技術を持った古賀さんは、3D CADを用いた設計から施工までトータルで受注できることができるのが強みだが、これまでは元請けが作成した設計デザインや顧客の要望に合わせて施工をすることで手一杯になり、古賀さんが独立時に望んでいた「設計から施工まで」というスタイルには至っていない現状があった。しかし、コロナ禍の影響でお家時間が増えたことにより、一般消費者の依頼が増加。奇しくもコロナ禍のピンチがチャンスとなり、新たな一歩を歩み始めた。
現在「古賀エクステリア」は筑後地区を中心に受注をしているが、同地区の同業者は古賀さんと同じように小規模経営の事業者が多く、エクステリア全般の設計から左官職人の施工技術まで一貫して遂行できる業者は少ない。さらに現在、左官技術を受け継ぐ若手の職人不足という業界全体が抱える悩みもある。夏は暑く冬は寒い、過酷な労働環境と技術習得まで時間を要することが、今の時代はなかなか受け入れられないという。古賀さんは顧客のライフスタイルに合わせ、デザイン性と実用性を兼ね備えたオリジナリティ溢れる新たなエクステリアサービスの実現が、若い職人の興味関心に繋がり、業界全体の人材育成にも繋がると考えている。また、デジタル技術を活用した効率的な働き方で左官職人やエクステリアのイメージアップを図りたいと願っている。