1500もの商品をつくってきたゴムのスペシャリストが新たな分野へ挑戦

株式会社 熊谷ゴム工業
久留米市田主丸町田主丸989-1
■代表者: 熊谷 浩昭
               
■補助金採択日: 2021年6月18日
             
■支援内容: 事業再構築補助金

事業内容

1993年の設立以降、多品種少量生産を得意とし、型物プレス成型や特殊ゴム製品加工など、1500品目を超えるゴム加工業務を請け負ってきた。取引先は150社を数え、現在はその経験を活かした技術コンサルタント業務も引き受けている。

About us 会社概要

約120社と取引をしてきた熊谷ゴム工業の挑戦
身近のさまざまな場所に使われているゴム。なかでも「株式会社 熊谷ゴム工業」が請け負うのは、ロボットやモーター、インフラ設備で使用される工業用ゴム製品やシリコン・フッ素などの特殊ゴム製品など、実に多種多様なゴム加工業務です。これまで約150社を数える取引先の要望に迅速に対応するだけでなく、仕上げ・検査員も確保することで品質を保ち、信頼を積み重ねてきました。
そんな熊谷ゴム工業に、舞い込んだのは、橋梁用伸縮装置の製作。橋梁用伸縮装置とは、ゴムや鉄でできた道路と橋の継ぎ目部分にかませるもので、気温の変化による橋梁の伸縮、地震や車両の通行に伴う橋梁の変形を吸収する役割を担っています。

老朽化に伴い発注増が見込まれる新たな分野へ
現在、日本にある道路構造物等は高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、今後急速に老朽化することが懸念されます。全国に約70万橋ある橋梁も建設後50年以上経過した割合は平成25年には18%だったが、令和5年には43%まで増えると見込まれています。(国土交通省HP)
久留米市でも、橋梁の架け替え工事を目にする機会が増えたと感じており、老朽化に伴う新規工事は、これからも長く続くことから新たに製造分野を広げるため、初めて橋梁用ゴム製品の製造にチャレンジを決めたのです。製造には設備投資が欠かせず、田主丸町商工会に相談しました。




Rebuilding 事業再構築補助金

●新たに製造する橋梁用ゴム製品のサイズ
橋梁用ゴム製品は長さが4.5mほどあり、また、道路幅によってはさらに長いサイズをつくる必要がありました。さらに、ゴムを接着した後、数日保管しないといけないため、置く場所もありませんでした。

●再構築事業計画書で導入したもの
現在の工場ではスペースを確保できず、納期に間に合わせるためには倉庫を新たに建設する必要があり、再構築事業計画書を申請。許可が下り、補助金で倉庫を建設することができました。

●人員体制と売上が変化
もともといたスタッフのうち、3人が新規事業の製造に関わっています。コロナ禍で自動車部品関連の製造が落ち込み、比例して、製造ラインで使用している機械のゴムの発注にも影響がありました。今回新たな事業に乗り出したことで、その落ち込みを埋める助け舟になっています。

●加工場を建設して以降の事業展開
当社に製造を依頼したクライアントも、「要望に合わせてそこまで対応してくれるのか」と喜んでくださいました。公共工事は忙しくなるシーズンがあるのですが、年間で平準化して作業できるように、製作サイズなどを検討しているところです。

●今回の計画書作成で試行錯誤したこと
これまで「ものづくり補助金」「生産性向上補助金」など申請してきましたが、再構築事業は第1回目の募集のタイミングで申請したため、すべてが手探りでした。どのように書けばいいのか田主丸町商工会のご担当者と何度もやり取りし、資料を加えて申請書を完成させました。

Future その後の展開と未来への展望

“熊谷印”のオリジナルブランドが目標
現在、橋梁用ゴム製品は売上全体の1割を占め、熊谷ゴム工業の新たな事業として成長していています。今後は今ある事業を拡大していくのでしょうか…と問うと、意外な答えが返ってきました。
「もちろん、今ある事業の拡大にも力を注ぎますが、正直なところ、限界があると感じています」。熊谷さんは最近、ある専門家に相談したそうです。「当社にはオリジナル製品がないんです。なので“熊谷ゴムブランド”、つまりオリジナルの商品開発ができれば、と考えています」。

それぞれの分野で技術とアイデアを出し合う
つくるものが多岐にわたるため、技術力が求められる現場。「『ゴムは生き物』と昔から言われていて、材料の置き方一つとっても、仕上がりが全く違うものができあがります」と熊谷さんは言います。この技術力を生かした製品で、特許や商標権などをとり、オリジナルの“何か”を見つけたい。高齢化社会を見越した介護の分野、コロナ禍で飼う人が増えたペットの分野も進出が可能な分野です。
「私たちがメインじゃなくていいんです。この技術や経験を活かしたい。そのためには認知度を上げる必要があるので、さまざまな集まりに出て人脈を広げているところです」と熊谷さん。ゴム単体で勝負するのではなく、その分野のスペシャリストと組んでの商品開発が、夢であり目標です。