新たに食品乾燥機械を導入しドライフルーツを開発
- 中野果実園
- 久留米市田主丸町石垣343
- ■代表者: 中野 勝英
- ■計画承認日: 2021年12月1日
事業内容
1956(昭和31)年から始まった現在で3代目となる果樹農園。町内では最多の15を超える品種のブドウ狩りができ、試作品種も含めると42種類のブドウをつくっている。雨の日でも果物狩りができる環境で、減農薬栽培の安心安全な果物を提供している。
About us 会社概要
1日100人もの観光客がゼロに
福岡県内外だけでなく、香港やマレーシア、シンガポールといったアジアやアメリカからもお客様が訪れる観光農園「中野果実園」。1956年にブドウ農園として事業をスタートした頃は贈答用の出荷が主でしたが、やがて観光客が果物狩りを楽しめる観光農園としても運営し始めました。また、ブドウだけではなくイチゴ狩りや柿狩りも楽しめるように規模を拡大。国内外の多くのお客様を迎えていました。
多い時で、国内観光客とインバウンドの割合は1:9。大型観光バスが1日に2台乗り付け、毎日のように約100人もの人々がフルーツ狩りを楽しんでいたそうです。がしかし、やはりコロナ禍が響きました。「中野果実園」の中野正二さんは「これだけのお客様に来ていただいていたのに、2020年1月からパタッと全部なくなりました」と話します。
立派な果実でも狩る人がいない現実
イチゴ狩りのシーズンなのに、旬を迎えてたわわになるイチゴが、狩られることのないまま腐っていく…。毎日が腐ったイチゴを採って捨てての繰り返しでした。本来であれば、出荷してもいいくらいの立派なイチゴさえも、ジャムやジュースなどの加工用に回してしまわないといけないほどに。かといって、出荷するにはマンパワーが足りません。この時期はブドウや柿の剪定の時期と重なるため、収穫してサイズをそろえ、パック詰めして商品化する作業ができなかったのです。そしてそれは、他のフルーツのシーズンでも同じことでした。
イチゴは総生産量3tのうち1tを、ブドウは総生産量11tのうちの3tを廃棄せざるをえず、せっかく土耕栽培・減農薬栽培で丁寧に育てた果物が、お客様に届かないままだったのです。「この安心・安全な果実をドライフルーツに加工し、農園に来園いただく方や、砂糖を使わないスイーツをお探しの方に販売しようと考えました」と中野さん。「中野果実園」の商圏範囲に、ドライフルーツを生産している農園は当時はまだなく、新たに加工の機械をそろえることにしました。
Management Innovation 経営革新
●補助金の相談で田主丸町商工会へ
「経営革新」を申請した知り合いから、私たちが挑戦しようとしているドライフルーツづくりに役立つかもしれない、と聞いて相談しました。はじめは「ものづくり補助金」に申請しようと思っていましたが、「経営革新」にも加工機械を購入できる補助金があると教えていただき、先に「経営革新」に申請したのです。
●申請して新たな繋がりが生まれる
申請書をつくっている間にSNSを活用した集客力をアップする講座などを個別に受けることができました。SNSの仕組みが見えたことは大きな収穫です。また、さまざまな補助金を探して申請していく中で、福岡市の観光関連の部署とも繋がりができ、ツアーの提案もいただきました。
●さらに別の補助金も申請
今回申請した経営革新とは別に、知り合いから教えてもらったIT導入補助金にも申請しました。ECサイトを2023年に立ち上げる予定で、このECサイトで販売するためにパッケージも検討中です。また、「経営革新」をとった事業者向けに別の補助金の案内がきて、エネルギー削減につながる事業に活用できるものだったので、井戸のポンプを性能の良いものに変える計画を提出しました。これから「ものづくり補助金」にも応募します。
Future その後の展開と未来への展望
ドライフルーツは試作段階で好評!
お客様が来園しにくい時こそ、新たな事業の可能性を探る――そうやってコロナ禍を切り抜けてきた「中野果実園」。機械を入れ、ドライフルーツを試作したところ、周囲からは良い評判を得られたそうです。「私が思う食感と、市販のドライフルーツのそれが全然違っていて、今は乾燥具合を調整しています」と中野さん。加工方法、乾燥の加減、できあがりの食感などベストを模索し、2023年での販売開始を想定しています。
また、海外渡航の規制も緩和されてきて、インバウンドのお客様が戻ってきはじめました。「最近、ようやくオセアニア――たぶんハワイだと思いますが――から予約が入りました。円安でさらにお客様が増えるのでは、と期待しています」。
さまざまな事業をステップにいつか法人化を目指して
今後の展開についてお尋ねすると、「法人化を考えている」と中野さん。廃棄を減らすために機械を入れても、現状の人数では加工に割けるマンパワーがどうしても不足します。良いものをつくろうと思ったら規模を縮小して質を上げるか、マンパワーを増やすか。「イチゴって、農作物の中でも一番労働時間が長いと言われているくらい過酷なんです。農業には高齢化の波も押し寄せていますし…。このまま売り上げを伸ばし、法人化して広く人員を募集する策が選択肢になってきます」と話してくれました。
フルーツを軸にさまざまな魅力を提案し、時代に合わせて変化もしていく。「中野果実園」は田主丸町の農業の底力を発揮し、これからを切り拓きます。