庭がなくても大丈夫。自宅でフルーツ狩りが楽しめる!? インテリア雑貨として飾りたい、果実付きの観葉植物
- カミハル
- 福岡県久留米市田主丸町上原280
- ■代表者: 草野 恭明
- ■創業: 平成5年8月1日
- ■計画承認日: 平成29年3月31日
- ■TEL: 0943-72-1646
植木・苗木発祥の地・田主丸。名産地で取り組む、こだわりの苗木づくり
田主丸町の植木・苗木業はおよそ300年もの歴史を持ち、現在では庭園樹や緑化樹から果樹苗や山林苗まで、栽培品種は約1,000種類にも及ぶ。町内の栽培面積はおよそ800ヘクタールにも達し、植木・苗木の一大名産地として全国にその名を轟かせている。
代表の草野さんの実家も、果樹苗の生産販売を手掛けていた。しかし草野さんはまず、植木の流通会社に就職。当時はバブルの全盛期、ゴルフ場や高速道路、アミューズメントパークなど、植木の需要は非常に高く、飛ぶように売れていったという。
その後、草野さんは独立し、現在ではミカンやレモンなど、柑橘類の果樹苗を中心に生産している。
長年、流通の現場を見てきただけに、苗木づくりでは常に消費者の目線を意識。苗木の数年先の生長を見極め、幹や枝ぶりを確かめながら育てている。
また「カミハル」では、育苗トレイに種をまきポット上で接ぎ木する、独自の栽培技術を確立。樹形や葉色が良い高品質の苗木を、安定的に生産することに成功した。
こうして精魂込めて育てられた苗木は、量販店やホームセンターなどに庭植え用として出荷される。
ミカンにレモン…植木のプロが育てる、高品質の果樹苗木
独自技術で、品質と生産量が大幅アップ
通常、種まきから出荷までは、「畑に種をまく」→「台木を育成」→「接ぎ木する」→「畑から素掘りした苗木の根を包んで出荷」という工程を踏む。
しかし「カミハル」では、「育苗トレイに種をまく」→「台木を育成」→「ポット上で接ぎ木」→「ポットのまま出荷」という工程をとる。
違いは、育苗トレイとポットを使うこと。畑に種をまくと、苗木が地中に根を張り巡らせる。そのため出荷の際は根を切らなければならないが、これが苗木にとっては大きなストレス。
その点、育苗トレイなら最初から根が広がらず、切る必要もない。無駄なストレスを与えないため、苗木の品質が安定し、消費者にとっても育てやすい苗木になる。
また育苗トレイはビニールハウスに持ち運べるため、作業が天候に左右されない。雨や雪が降っても作業日数は確保でき、これが安定した生産量につながっている。
育苗トレイのメリットは、これだけではない。寒い時季はハウスに移動し、暑い時季には寒冷紗の下に移動する。これにより「種まきは春、植え替えは秋」と、限定されていた作業時期が延長された。作業時期が前後に延びれば、そのぶん出荷時期も延長できる。各工程における作業時期を少しずつずらしていくことで、周年出荷を可能にした。
また畑ではなく、ポット上で接ぎ木するため「畑から素掘りして苗木の根っこを包む」作業は不要。ポットのまま出荷するため根がむき出しにならず、見栄えも良い。さらには購入者が管理しやすいなど、カミハル独自の栽培法には、いくつものメリットが隠されている。
植木も生きもの。真心込めた、商品づくり
他から仕入れた商品に関しても、「カミハル」ならではのこだわりを見せる。
仕入れ商品は、畑に植えられていた苗木・植木の根を切ってから出荷されたもの。そのまま枯れてしまうリスクがあるため、一般的には仕入れから一ヶ月以内に再出荷する。
しかしこちらでは半年以上も育成し、品質を安定させてから出荷する。植物にとって根を切られるだけでなく、異なる環境に慣れるまでにも時間がかかる。もちろん枯れてしまう苗木もあるが、そのリスクは消費者ではなく「カミハル」が負う。
植物も生きもの。植木・苗木のプロである自分たちが時間をかけてしっかりと養生させ、元気な状態に戻してから出荷する。
経営革新計画を策定してみようと思ったきっかけは?
庭のあるお宅は減少傾向にあるため、庭植え用の苗木は購入層が絞られます。商談会や展示会などで話をしたバイヤーからも、「庭植え用の苗木とは異なる商品が欲しい」と言われていました。そこでインテリア雑貨として、室内に飾れる果樹苗木を考えたんです。
最近は消費者の価値観が、モノの所有に価値を見出す「モノ消費」から、体験などを重視する「コト消費」へシフトしていると言われます。
この新商品でも、「果樹苗木を愛で、育て、実った果実を食す」という点を重視しています。
経営革新計画の内容
Q. 新商品の概要と、その新規性を教えてください。
テーマは、「果樹苗木をインテリア・ギフトとして生産・販売による販路開拓及び収益性の向上」です。今までは庭植え用でしたが、インテリア&ギフト用ということで、室内やベランダで育てられる苗木を開発しました。今はミカンやレモンを中心に、愛でること、そして食すことのできる「果実付きの苗木」を生産しています。
うちの苗木は、ポットで育てる独自技術のため樹形や葉色、実付きが良く、コンパクトなのが特長です。もともと観葉植物に向いているのですが、今回は「ギフトにもなるインテリア雑貨」ということで、さらに気を使いました。枝の向きを考えながら、1本1本キレイに鋏を入れて…。生け花の世界に通じるものがあるんじゃないかと思いましたよ(笑)
マンションなど庭のないお宅でも、これなら果樹の栽培を楽しんでいただけます。またミカン類の果樹苗木は、関東より北では生育しませんが室内なら栽培できます。
マンション住まいの方、関東以北の方など、これまでアプローチできなかった層にも訴求できると期待しています。
Q. 将来の展望は?
この新商品で、新たな市場や販路を開拓できればと考えています。
従来品は量販店やホームセンターに卸していましたが、この商品は取引先の商社を介して、インテリア雑貨店や家具店にも納品される予定です。実際、付き合いのある関西のグリーン専門店の方からは「商品化したら絶対に欲しい」と言ってもらってます。
また、そのための商品の魅力の向上にも取り組んでいます。
今後は、いろんな工夫をすることで、お客さんの楽しみを増やしていきたいですね。
経営革新計画を策定してみていかがでしたか?
Q. 策定期間中、どんな支援を受けましたか?
経営革新の話し合いとして、経営指導員さんに正式に来てもらったのは3〜4回だったかな。でも、電話やメールで相談したり、用事のついでにちょっと寄ってもらったり、こちらから商工会に出向いたり…。何度も話を聞いてもらって、こちらが考えていることの要点を上手にまとめてくれました。
一人だったら忙しさにかまけて、前に進んでいなかったと思います。
経営革新のおかげで前に進んだ、形として残ったと思っています。
経営革新だけじゃなく、この事業を進めるにあたり「小規模事業者持続化補助金」や、「福岡県革新的サービス開発補助金」も申請し、採択されました。
おかげで作業用ベンチの設置や、防御ネットなど、品質向上のための環境改善ができました。もちろんメリットが大きかったのですが、予想外のデメリットも出てきました。でも、何もしなかったら何もならない。デメリットも、前に一歩進んだ証。今は、そのデメリットを解消するための方策を模索しています。おかげで前に進んでいるという実感がありますよ。
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夏は桃、秋は栗…自宅産フルーツ、増加中
今はミカンやレモン、シークワーサーといった、実がなりやすい品種を生産していますが、将来的にはモモや栗、柿など、果樹の種類を充実させたいと考えています。
「桃栗3年、柿8年」というのは、栽培技術がなかった昔の話。今では鉢植えでも、ちゃんと実をつけます。庭がなくても大丈夫なんです。桃や栗、柿などが、マンションのベランダで収穫できたら面白いですよね。
実際にポットでの栽培は成功しているので、時間をかけずに商品化できると思っています。
楽しく、充実した人生を…働きやすい職場環境を整える
うちのモットーは、「自主・民主・連帯・ありがとうと笑顔の感激」。
従業員に「ここで働いて良かった」と言ってもらえる、働きやすい職場を目指しています。目標は、従業員の子どもにも「将来、ここで働きたい」と言われること(笑)子どもは親の働く姿をよく見ていますからね。
また、うちには20代が2人、30代が1人、40代が3人と、若いスタッフが大勢います。
スタッフにも接ぎ木などの技術を継承し、一生食っていけるだけの技術を身につけさせたいですね。