九州に2社の特殊技術で、新素材の加工に挑戦! 熱効率の良いステンレスで、IH対応の業務用調理器を開発。
- 有限会社 江口へら鉸り製作所
- 福岡県久留米市田主丸町豊城482-1
- ■代表者: 江口 聖二
- ■創業: 昭和50年5月29日
- ■計画承認日: 平成29年9月30日
- ■TEL: 0943-72-3539
平面の金属板が3Dパーツに…魔法のような技術をもつ町工場
昭和50年創業の「江口へら鉸り製作所」は、全国でも珍しい「へら鉸り」での金属加工を行っている。
へら鉸りとは、高速で回転させた金属板にへら(棒)を当て、少しずつ変形させていく金属加工の一種。熟練の職人技により、薄い円盤状の金属板が、半導体やバイクなどのパーツに加工されていく。
金属板がみるみるうちに平面から立体へと姿を変える、まさに魔法のような加工技術だ。
加工材としては、鉄や銅、ステンレスやアルミニウムといった一般的な金属から、チタンやニオプ、ニッケルといった特殊金属までを手掛けている。
もともとはへら鉸りの専業メーカーであったが、現在は一般機械加工にも業務を拡大。
現在の社長は3代目で、先代である父親の技術を継承しつつ、新規事業にも積極的に取り組んでいる。
一点ものの注文にも、希少な特殊技術で対応
九州に2社の特殊技術
金属加工の中でも熟練の技が必要とされるため、現在「へら鉸り加工」を行っているのは、九州でわずか2社。なかでも最初から最後までを完全な手作業で作り上げることができるのは、わずか数名の職人のみとなっている。
全国的にも珍しい、特殊技術だ。
多品種小ロットの生産に対応
雄型と雌型の2つの金型を必要とする「プレス加工」と異なり、雄型のみで加工できる「へら鉸り」は、製造コストが比較的安価なため小ロットでの注文も可能。
一点ものの製造にも対応している。
経営革新計画を策定してみようと思ったきっかけは?
日頃から、困ったことがあったらすぐ商工会さんに相談しています。
今回は金融相談で商工会に行ったときに、指導員さんの方から経営革新の話をいただきました。
うちの「へら鉸り加工」が、業界でも珍しい特殊技術になるということで…。
この技術を活かした新製品を開発するにあたり、経営革新を取得しませんかと声をかけてもらいました。
経営革新計画の内容
Q. 新商品の概要と、その新規性を教えてください。
今までなかった熱伝導率の良い、IH対応の業務用ステンレス鍋を開発しました。
従来のIH対応の業務用ステンレス鍋は、SUS304(磁性のないステンレス)と鉄の三層構造だったため熱電導率が悪く、強い火力を必要とする業務用には適していませんでした。
そこで弊社では、加工が難しいため他社が手掛けていなかった、SUS430(磁性のあるステンレス)単層の業務用ステンレス鍋を開発しました。
SUS430は熱伝導率が良く、業務用調理に必要な熱量を短時間で伝えることができます。
業務用に必要とされる大きな熱量を短時間で確保できるのが、新商品の最大のメリットです。
Q. 将来の展望は?
消防法の改正により、火を使わない安全なIH対応の業務用調理器のニーズはどんどん高まっています。
実際に依頼をいただいているところもありますが、調理をオートメーション化したい飲食店チェーンや、客室や個室での火の使用を避けたい飲食店など、IH対応の業務用調理器にはかなりの需要があると見込んでいます。
経営革新計画を策定してみていかがでしたか?
Q. 策定期間中、どんな支援を受けましたか?
書類などをたくさん用意しないといけませんでしたが、すべて商工会さんに相談しながら進めることができました。
昔から書類仕事が苦手で、父親から事業を引き継いだ際にも、「労働保険って何?」という状態でした。そのときからですが、つまらない質問でも何でもすぐに聞けて、すぐに対応してもらえるのが良いですね。
Q. 策定のメリットはありましたか?
経営革新計画を策定したことで、将来の計画が明確になりました。
書類を作ったことで、ちゃんと実行しないといけないなと思いますしね(笑)
また、今までの事業は部品の製造がメインでしたが、今回は最終商品の生産に取り組みました。
これを機に、今後は一般消費者向けの販売展開も考えていきたいですね。
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丁寧な仕事が光る、オーダーメイドのものづくり
手作業に頼る部分の大きい「へら鉸り加工」では、発注者のこだわりを忠実に再現することができます。
図面がなくても、寸法と形状のみで製品化できる点も、熟練の職人を抱える当社の強みの一つです。
熟練の職人たちが、己の感覚だけで±0.2mmの精度を実現させていきます。
そのため取引先からは当社の仕事ぶりにも高い評価をいただいています。
注文者の感覚までを製品に反映
ユニークな例では「製品を一つ一つ、微妙に異なるように仕上げてほしい」というインテリア雑貨の注文を受けたことがあります。
「微妙に」という発注者の感覚を共有するため、ふくらみや角度など細かな点まで確認し、職人の手仕上げでそのイメージをカタチにしました。
このような繊細なオーダーにも、できるだけ忠実に応える努力をしています。