運送から整備へ…未来を見据え、多角化を推進
現地に駆けつける!移動式トラックによる整備事業
- 西日本運送 有限会社
- 福岡県久留米市東合川1-2-3
- ■代表者: 髙尾 勇二
- ■創業: 昭和44年7月1日
- ■計画承認日: 平成30年10月31日
- ■TEL: 0942-44-3377
日本を舞台に大活躍!トラックが運ぶ、荷物と信頼
日本経済の大動脈・物流を支えるトラック運送。ここ「西日本運送有限会社」では、福岡〜東京間を中心とする長距離運送を担っている。車両規模10台以下の零細企業が全体の50%を占める運送業界において、「西日本運送有限会社」が所有するトラックは80台以上。そのスケールメリットを生かし、安定的な経営を実現している。
主な取引先は、日本の郵便を一手に担う「日本郵便運送株式会社」。昔は民間に委託するのが難しく繁忙期だけの付き合いだったが、郵政民営化とともに取引の幅を徐々に拡大。今では年間を通し、定期的に仕事を受注している。もちろん郵便事業には重責が伴う。そのため代表の髙尾さんは、「トラックが故障しましたじゃ、済まされない。たすきがけでも繋がないといけない」と気を引き締める。
長距離を走るため、運送途中のリスクを無視することはできない。そのため、田主丸営業所と久留米本社のほか、9年前には愛知、4年前には埼玉にも営業所を構えるなど、万全の態勢を敷いている。
高品質の輸送サービスが功を奏し、「日本郵便運送株式会社」との取引実績は40年以上にも及ぶ。このほか「キリングループロジスティクス株式会社」など、現状では大手取引先に恵まれているものの、人材の確保や労働者の高齢化、さらには自動運転化による事業環境の激変など、運送業界を取り巻く状況は厳しくなる一方。「西日本運送有限会社」では、これらの短期・長期の課題をしっかりと把握し、さまざまな新規事業への参入を模索。先を見据えた経営を行っている。
安心・安全な取り組みで責任を全うする
他社に先駆けて運行管理システムを導入
数年前に長距離観光バスによる事故が多発して以来、運送業界には厳格な安全管理が求められるようになった。事故への反省を踏まえデジタコ装着の義務化などが進められたが、こちらでは一連の事故が起こる前から安全機器を自主的に装着。GPSやアルコール検知器、ドライブレコーダーなど、さまざまな運行管理システムを率先して導入している。これらのシステムを積極的に活用することで、ドライバーと荷物の「安心・安全」を確保する。
トラックを早めに更新するなど、きちんとした設備投資ができるのも、こちらの強み。独自の高い安全基準が、そこで働く労働者の命を守り、荷物の遅延をはじめとする取引先への不義理を未然に防いでいる。
企業理念は高品質の輸送サービス
企業理念は、「高品質の輸送サービスを提供し、社会に貢献します。【安全・確実・迅速】プラス【使命】をモットーに責任ある業務を遂行して参ります」。
誠実な仕事が大手企業との取引に結びつき、さらに大手取引先が求める高い安全基準を満たすため、最新の運行管理システムを導入する。
双方の高い意識の下、高品質を保つ良い相乗効果が生み出されている。
経営革新計画を策定してみようと思ったきっかけは?
車両の自動運転化など、運送業界では今後、事業環境が大きく変化することが予想されています。そのため、今のうちから事業の多角化を進めていかなければなりません。
今回の経営革新では、本業である運送業を離れて、整備事業に参入していきたいと思っています。
運送会社による整備事業への参入は他に例がなく、画期的なアイデアだと自負しています。他社で取り組んでいるところもなく自信があったので、経営革新を取得することにしました。
経営革新計画の内容
Q.新サービスの概要と、その新規性を教えてください。
「運送業からの脱却、環境変化に対応できるビジネスモデルの構築」です。
具体的に言うと、タイヤとフロントガラスの交換サービスを展開していこうと思っています。この2つは道路運送車両法における分解整備に該当しないため、認証工場の許可がなくても行えます。
画期的なのは、整備専用のサービス車両を準備したことです。通常は故障した車両を整備工場まで運ばなければなりませんが、うちは移動式トラックなので現地に駆けつけ、そこで交換サービスを行うことができます。
最近は整備工場でも人手不足が進んでいて、修理してもらうのに時間がかかる。トラックがないと仕事になりませんからね。運用効率の低下を防ぐという点でも、すぐれたサービスだと思います。現地に駆けつける「利便性」と、すぐに修理できる「即応性」がポイントです。また、うちでは元ドライバーが整備するので、ドライバーならではの配慮もできると思います。
このほかにも整備事業の一環として、「DPFマフラーの洗浄」も考えています。DPFマフラーとは、排気ガスに含まれる有害な物質を取り除く装置のこと。定期的な洗浄が必要ですが、洗浄するにも費用がかかるので、ついつい後回しにしてしまう。そうするとDPFマフラーが故障して、トラックが止まるんです。環境対応のため排出ガスに関する規制などが急ピッチで進みましたが、これに業界がついていけてないんですよ。こういった分野にもどんどん参入していきたいですね。
Q.将来の展望は?
将来的には全国に4つある営業所のすべてに、移動式の整備トラックを配置したいと思っています。
現在、うちには80台ほどトラックがあります。トラックの修理や整備って、すごくお金がかかるんですよ。
うちでは長距離を走るため、年間走行距離が30〜40万キロ。他社に比べても圧倒的に長く、整備コストは莫大です。そのため、まずは自社の車両整備を内製化することから始めていこうと考えています。内製化するだけでも、かなりの収益改善が期待できますから。
内製化により整備技術がきちんと身についたら、外部受注を進めていく予定です。整備工場に持っていくと高額になるので、うちでは比較的安価な価格設定にするつもりです。外部受注が軌道にのると、新たな収益源になります。
今後、自動運転や電気自動車が出てきても、消耗部品であるタイヤやフロントガラスのメンテナンスはおそらく必要とされるでしょう。当面は安定が見込まれる整備事業に参入することで、経営の多角化を図りたいですね。
経営革新計画を策定してみていかがでしたか?
Q.策定期間中、どんな支援を受けましたか?
助かりましたよ。補助金とかいろんな制度があっても、冊子を見るだけじゃ分からない(笑)
今回の経営革新においては、自分の考えを聞いてもらえたことも役に立ちました。自分の中でまとめきれていなかった分をヒアリングしてまとめてもらったり。専門家の先生には、自分のビジョンを分かりやすく明確にしてもらったと思います。日頃からいろいろと考えているんですが、商工会さんのおかげで自分の頭の中を整理することができましたね。
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高齢ドライバーに働き方の選択肢を!
ドライバーが動いた分だけ利益が出る。運送業界は典型的な労働集約型産業です。最近はドライバーを確保できずに受注を制限せざるをえない会社も出てきています。うちでは50名以上のドライバーが働いてくれていますが、それでも人手の確保は大きな課題です。
ドライバーの確保は運送会社の生命線ですが、それと同時に現場ではドライバーの高齢化も進んでいます。特にうちは長距離を運転しないといけないので、高齢になると難しい。経営革新を取った整備事業は、高齢ドライバーに働き方の選択肢を提示するためでもあります。
長距離トラックのドライバーは、どうしても拘束時間が長くなりがちです。そのため、ドライバー以外の業務を設定し、仕事のローテーションなどで働き方を変えていければと考えています。
新たなるチャレンジ!次なる一歩は中国進出
中国・香港に独自の流通ルートをもつ会社から、新しい仕事に誘われています。今までは中古車を売っていたそうですが、新たにメイドインジャパンの一般雑貨を売りたいと。中国では、日本のメーカーが現地で生産したものではなく、日本のメーカーが日本で作ったものが好まれるらしいんです。田主丸を中心に全国から商品を集めて、中国・香港に送るよう着々と準備を進めています。
中国・香港まで送るわけですから、これまで以上に効率的な輸送が求められます。今までは荷台の上部に空間があったのですが、スペースを無駄にしない、空間を隙間なく使う方法に取り組んでいます。
また、現地での二次配送をスムーズにするためにも、荷物の積載方法には工夫が必要です。新しい仕事を始めると、いろいろなことに気がつきますね。