最新設備と職人の熟練技術の融合で、最高級のモノづくりを

株式会社 野口機工
福岡県久留米市田主丸町地徳2667
■代表者: 野口 秀和(インタビュー:営業部長 窪田 圭)
■創業: 昭和60年5月1日
■計画承認日: 令和3年3月31日
 
■TEL: 0943-72-1131

自社製品を持たないことを強みに

昭和60年の創業以来「低価格」「低不良率」「納期遵守」で顧客の信頼を得て売り上げを伸ばしてきた野口機工は、自社製品を持たない部品加工メーカーである。自社製品を持たないとは、一体どういうことなのか。それは、特定の部品を大量生産して出荷するのではなく、顧客の注文に応じた部品を適宜製作して納品しているのだ。
一般的に加工メーカーの多くは、生産性や作業効率の面から大量生産型の受注を優先する。このため、発注業者にとって、単品受注は忌避され、価格も割高となる。しかし、同社はひとつでも、求められる部品を高品質かつ適正価格で製作することで差異化を図り、商機を見出してきた。短期納品が求められる試作品や治具(ジグ)などの加工品から、1/1000mmの誤差も許されない精密部品に至るまで幅広く対応できる技術と体制を備え、顧客のニーズに寄り添っている。

機械には超えられない「熟練の技」

工場で工作機械を扱う職人は「以前の機械に比べて操作も簡単で精度も格段に上がりました。サイズもコンパクトで取り扱いもラクになり、生産効率も随分上がりました」と評判は上々。そして冗談交じりに「機械が優秀すぎて、我々職人の仕事がなくなっちゃうよ」と話してくれた。
しかし、工程の中には機械では完遂できない職人による「熟練の技」が必要な作業がいまなお多数存在している。最新のデジタル技術を以ってしても太刀打ちできない職人の技だ。この技を持った職人が高度な最新機械を扱うことで、さらに高品質の製品を製作することができる。機械の性能を理解し、最大限活かすことができるのも機械を扱う職人だ。野口機工の最大の強みは、やはり高い技術を持った職人であるのは間違いない。




経営革新計画を策定してみようと思ったきっかけは?

状況を正しく把握し、経営戦略を具体化
コロナ禍により世界中が混沌とする中、経済の見通しもつかず、数多く存在する機械加工業者の中で自社が生き残るにはどうすれば良いのか、そのためにはどのように事業を進めていくべきかを見つめ直したことがきっかけでした。自社が抱えている課題解決に必要な機器を導入するにあたり、田主丸町商工会に相談したところ経営革新計画を策定することを提案いただきました。各種申請書類を作成するにあたり、現場の作業から会社の経営まですべてを数値化し、現状と中長期の目標を具体的に示す必要がありました。書類の作成作業は簡単ではありませんでしたが、会社の状況を正しく把握することで、必要な機器の選定や将来に向けた人員計画を策定できました。そして、今後の経営戦略もより明確になり、それを社内で共有できたことはとても良かったと思います。

新たな機器を導入したメリットは?

受注辞退を無くし、競合他社より優位に
一番のメリットは、高精度の三次元測定機の導入により、これまで測定精度の問題で辞退せざるを得なかった受注を受けられるようになったことです。近年、高精度の機械が次々と開発され、また顧客が使用する部品もこれまでよりも高い正確性が求められるようになりました。もし製作した部品に精度不良があった場合、顧客の信頼を失う恐れがあることから、高精度が求められる部品は受注辞退を申し入れていました。しかし、今回、高精度の三次元測定機を導入したことで、高精度な部品加工の受注を増やすことができ、競合他社に対しても優位に立つことができていると考えています。
さらに、最新の測定機は取り扱いも容易で形状もコンパクト。現場の作業負担も軽減され、作業効率が良くなったことで、生産性も上がってきました。測定機の購入に際し、全額自社負担では早期導入が難しかったので、補助金の存在は非常にありがたかったです。

今後取り組んでいきたいことを教えてください。

部品加工から組立てまでワンストップで
現在、弊社は部品加工を事業の柱にしています。しかし、装置設計から部品加工、組立てまで、一貫対応を求めるメーカーも多く、発注対象から外れてしまうこともあります。今後、社内で設計から組立てまで一貫して対応できる体制を構築することで、大手メーカーの受注も期待できると考えています。そのためには、設計者と組立て作業者を採用したり、現在の工場内に作業スペースを確保したり、様々な環境整備が必要です。
人材の確保については、各方面から募集をする予定ですが、まずは「野口機工ってどんな会社?」と興味を持った人が情報を得られるように、2021年1月に自社のホームページを開設しました。これからの時代、多方面からの受注やより良い人材確保などのために、情報発信は非常に重要なアクションだと思っています。

時代が求めるデジタル技術と熟練技の融合

日進月歩で進化するデジタル技術は、モノづくりの現場において大きな影響を与えている。高精度が求められる機械加工も作業の自動化が進み、スピーディかつ正確な製作が可能になった。しかし、どんなに技術が発達しても最後に頼るのは人間の手。野口機工は、角物部品や丸物部品、手のひらサイズの小型部品から全長2mを超える巨大プレートの加工に至るまで、顧客のオーダーに合わせた加工品を少量から対応できる柔軟性が強みだ。しかし、角物部品と丸物部品、小型部品と大型部品の加工はまったく異なる技術と機械が必要になる。現場の職人は自らの技術を磨きながら、機械の操作方法や加工技術のスキルアップを図っている。このように熟練の技を持った職人が高精度の加工機を使いこなすことで、従来よりも精密な製品の安定製作を可能とし、製品のさらなる付加価値を生み出している。
今、もっとも重宝されるのは職人の技だけでは作り出せない精密な製品であり、またデジタル技術を駆使した機械の性能だけでは生み出せない唯一無二の製品である。

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