旬や地元の食材を大切に、“家時間”を楽しめる人気商品を開発
- 株式会社 10 years after (Restaurant Spoon)
- 久留米市田主丸町益生田261-27
- ■代表者: 井上 勝紀
- ■計画承認日: 2021年8月24日
事業内容
ホテルやレストランでフレンチをベースにイタリアンやパティスリーを学んだ井上勝紀さんが、2012年11月に立ち上げたフレンチレストラン。田主丸町近郊からも訪れる人が多く、福岡市内と福岡県外のお客が約60%も占めている。
About us 会社概要
客席数は最小で1/3の規模に…
2012年のオープン以降、ランチは予約でカウンターまですべて埋まってしまうほど多くのお客様を魅了してきた「Restaurant Spoon」。お店での食事を目的に田主丸町に来るお客様に恵まれていましたが、先の2020年がターニングポイントになります。18席あった客席は、少ない時で3組6人、最大でも3組12人と大きく絞ることになりました。
また、2500円と4000円のコースに代わって、12時スタートの5000円のコースのみに変更。単価を上げた分、夜の料理をランチでも楽しめるメニュー構成を提案し、ご理解いただいているそうです。オーナーシェフの井上勝紀さんは「無理なくきちんと良い料理をお出しして営業できる方法を、と考えて絞り出した案です」と話します。それでも、お客様が健康状態に不安がある場合は、どうしても席が空いてしまうことが多々あったそうです。
運よくすでに挑戦を開始していたWeb販売にシフト
「コロナ禍でお客様の外食意識が薄れ、ご自宅での過ごし方にお金をかけることが増えたことが新たな事業に取り組むきっかけになりました」と井上さん。外での食事の回数が減っているのは明らかな事実、「早いうちに自宅向けの商品開発にシフトしないといけない」と考え、動き出しました。
幸いなことに、コロナ禍の前からWeb販売にはトライしていました。自身の入院がきっかけで、「店を休業する」「Web販売用の商品をつくって売る」の2択で、井上さんが店に立てない間はバスクチーズケーキを売ることになったのです。「これがものすごい売れ行きで。全国から注文がきて、月に1000本くらい売れました」。
その後、オリジナルスープも開発し、「日本全国 飲食店の美味お取り寄せ100選」にも取り上げられました。Web販売での手ごたえを感じ、また、梱包や発想のノウハウも得て、コロナ禍真っただ中にスムーズにWeb販売へ方向転換できたそうです。
Management Innovation 経営革新
●経営革新計画書で実施したこと
新たに感染防止策の換気扇を導入しました。また、Web販売の商品を周知するためのリーフレットを作成し、既存顧客や卸先への営業活動を実施しました。店舗にいらっしゃったお客様がお買い求めになることもよくあります。
●新たに開発した商品
家族で囲む食卓を想定し、10種類のスパイスをブレンドした「チキンバターカレー」と、旬の野菜をディップして味わう「バーニャ」を開発しました。カレーは一般に手に入りにくいスパイスを使い、辛みなしでお子様も食べることができます。また、バーニャはニンニクの香りが高く、まろやかさのある味わいで、野菜がすすむ商品です。
●「チキンバターカレー」と「バーニャ」の反響
辛みがないため、辛いものがお好きな方のために別添えで「ハリッサ」という辛み調味料をお付けしていたら、ハリッサもすごく人気が出て、今はハリッサだけでも販売しています。
Future その後の展開と未来への展望
新商品は想像以上の売れ行きに!
オーナーシェフ・井上勝紀さんが、「店では出していないけれど、ずっとアイデアを温めていた」という「チキンバターカレー」と「バーニャ」。フレンチをベースにイタリアンで4年、パティシエとして2年の修業を積み、世界各国に展開するホテルグループのレストランで、世界中のシェフとコミュニケーションしてきた井上さんならではのアイデアが満載です。
「カレーは、『これを入れないとチキンバターではない』といわれる、日本では流通していない重要なスパイスを、当時の伝手で仕入れました。また、バーニャはイタリア人シェフに習ったレシピを、素材を味わう日本人の味覚に合わせて改良しています」と井上さん。オンラインストアで詳しく説明を入れて販売したところ、想像の1.5倍以上売れているそうです。
食材にまつわる課題に料理人として挑む
井上さんは「もう、(外食は)以前のようには戻らないと思っています」と言います。だからこそ、大事なのはお客様との信頼関係です。「『状況が変わったから、今度はこれを買ってください』といきなり言ったところで響きません。これまで有事の時は食べ物を送ったり、支援金を送ったりということを続けてきて、関係性ができていたからこそ今があります」。
現在進行形で続く種まきで、新たなお客様と出会い、信頼関係をつくっていく。その一つの手段として、Web販売は軌道に乗り始めました。バスクチーズケーキの新作は次々に注文が舞い込み、地元の果実を使ったジャムも仕込んでいます。「田主丸町は質の高い農産物をたくさん生産していますが、中には商品にならずに廃棄されるものもあります。そういった果実を購入し、私の知識や技術を活かしつつ商品開発するのが、料理人としての使命だと思っています」。
店内では、オープン当初と変わらずその日仕入れた食材でつくる料理との“一期一会”をお客様に楽しんでもらう。そして今後は、食品ロスをすくなくするための取り組みを一事業として立ち上げ、3年後を目途に敷地内に製造スペースとしてキッチン工房を増設する――井上さんの挑戦はスピードを上げて進みます。