着物の魅力を伝えていきたい「縁づくり」に励む老舗店
- 株式会社髙尾呉服店
- 久留米市田主丸町田主丸213
- ■代表者: 髙尾 美恵子
- ■計画承認日: 2023年6月2日
事業内容
1936年に田主丸町で創業した老舗呉服店。1959年10月に法人化し、現在は2代目の妻である美恵子さんが代表取締役、長男の健さんが専務取締役を務める。ネット通販、訪問着のレンタル、イベントの企画、SNSでの情報発信などにも積極的に取り組む「酸素ルーム」の導入で家族連れや若い世代、遠方からの来店者も増えている。
About us 会社概要
創業88年の老舗、ネット市場では寝具が人気
戦前から営業を続ける老舗として、冠婚葬祭で身に付ける呉服を中心に地域密着のサービスを手掛けてきた髙尾呉服店。京都の呉服問屋から長年仕入れており、確かな品質や豊富な品揃えは高い評価を得ています。店内外で定期的に展示会を行いながら、顧客との信頼関係を築いてきました。
現社長である美恵子さんの長男・健さんが大阪の呉服店での修業を終え、店に戻ってきたのは16年前。そこから販売チャネル拡大を目指して呉服・寝具のインターネット通販にも乗り出し、楽天市場に出店しました。特に寝具を取り扱うネット店舗は、地道な販促活動によって高評価のクチコミが並ぶようになり売り上げも増加。さらに寝具メーカーの西川株式会社と共同でオリジナル寝具を開発し、家庭内需要に加えてギフト需要も取り込んで業績を伸ばしてきました。
しかし2020年に新型コロナウイルス感染症の感染が拡大すると、緊急事態宣言による行動制限もあって冠婚葬祭そのものが自粛され、呉服の売り上げが激減。行動制限が解除された2023年5月以降は徐々に客足が戻りつつありますが、新たな集客方法の確立が課題となっていました。
新規事業として健康サービスに着目
新たなサービスや集客方法について情報収集を続けていた健さんはある日、大分県にある呉服店が「酸素カプセル」を店内に設置し、集客につなげているという話を聞きました。酸素カプセルとは密閉した室内の気圧を上げて多くの酸素を体内に取り込むことができる器具で、これによって血液の循環が促進され、疲労回復やケガの改善促進などが期待できると言われています。
さっそく視察に赴いた健さんは呉服店の主人から「酸素カプセルを利用する目的で来店する人たちは確実に増えている。彼らはすぐに顧客になってくれるわけではないが、新たな縁づくりとして考えている」と聞き、自社でも新規サービスとして採用することにしました。一人が横になるスペースしかない酸素カプセルよりも、複数人で利用できる酸素ルームを採用することにしました。
ただ、酸素ルームは高額商品。そこで購入にあたって、補助金が申請できないかと田主丸町商工会に相談しました。
Management Innovation 経営革新
・田主丸町商工会への相談のきっかけ
もともと健さんが商工会の青年部に、美恵子さんが女性部に所属していたこともあり、新規事業を行うにあたっても気軽に相談することができました。
・実施内容と成果
補助金申請に必要となる経営革新計画をはじめ、設備投資計画や運転資金計画などを作成しました。「頭のなかで考えていたことを実際に数字や文書としてアウトプットすることで、改めて今後の取り組み、経営方針などを確認することができた」。
・経営革新計画書に基づいた取り組み
2023年10月に酸素ルームを購入して、店内に設置。利用料初回500円、2回目以降1,000円でサービスを開始しました。チラシやSNSを使って告知したところ、地元はもとより市外からも幅広い年代の方が来店するように。酸素ルームの利用をきっかけに着物を購入する人も出るなど、さっそく波及効果も生まれています。
Future その後の展開と未来への展望
新たな接点づくりに「酸素ルーム」活用
呉服店には、どうしても敷居の高さがついてまわります。そうしたイメージを払拭する手段の一つが酸素ルームの設置でした。利用料そのもので収益をあげるというより、これまで着物と縁遠かった人たちとまずは接点を持とうという取り組みです。
この狙いは的中しました。「設置後は予想以上に多くの方にご利用いただいています。小学生からお年寄りまで、男女問わず幅広い年代の方が来られます」。1回あたりの利用時間は50分間。一人での利用はもちろん、室内は数人が入れる程度の広さがあるため家族や友人と一緒に利用して談笑を楽しみ、あるいはテレビを見ながら横になりゆったりと過ごしている人たちも多いといいます。
接点づくりといえば、「着物を着てお出かけするイベント」も2024年夏からスタートしました。11月は紅葉狩り、12月はクリスマスパーティーというように季節に合わせたイベントを企画し、「着物を着て集まろう!」とSNSなどで呼びかけています。自分の着物で行ってもよし、店で好きな着物をレンタルして着付けまでしてもらうもよし。イベントの様子をSNSで見た人が次の回に参加するという好循環も生まれています。
着物を販売するだけでなくお披露目する場を用意することも、新たな顧客づくりにつながっています。
着物レンタルにも「高品質」で対応
「卒園式や七五三、結婚式などで着物を着てみたいという30~40代の女性が増えていると感じます」と健さんが語るように、ここ数年はちょっとした訪問着(既婚・未婚に関係なく着用できる準礼装の着物)ブームになっているようです。
「SNSなどで他の人が着ているのを見て素敵だと思い、自分も着てみようと思った」という人が多いそうですが、いきなり購入するのはハードルが高いのも事実。そこで髙尾呉服店では振袖に加えて訪問着のレンタルも始めました。「仕入れる品物の質にはこだわってきました。貸衣装店などでは取り扱っていないような高品質の着物も、当店ではレンタルで出しています」と老舗呉服店の強みを生かしています。
「様々なサービスやイベントを通じて、多くの人とのご縁をつくっていきたい」と健さん。着物の魅力発信に努める次期社長は、「今回の取り組みを通して『私たち若い世代が経営をしっかりと担い、業界や地域を盛り上げていこう』と決意を新たにしました」とさわやかな笑顔を見せてくれました。