事業のヒントは地域の悩み…地元密着企業の本領発揮! 果樹農家のロスを利益に変える、夢の6次産業化支援事業

両筑製氷冷蔵 株式会社
福岡県久留米市田主丸町田主丸455-30
■代表者: 古賀 速一
■創業: 昭和13年10月1日
               
■補助金採択日: 平成29年3月17日
■TEL: 0943-72-2212
             
■支援内容: 小規模事業者持続化補助金

柔軟な姿勢で時流に乗る!地元のニーズに寄り添い、業務を拡大

冷蔵冷凍倉庫の管理をメインに、食用氷の製造販売まで手掛ける「両筑製氷冷蔵株式会社」。その歴史は昭和13年まで遡る。
もともとは田主丸の中心部にて魚市場を営んでおり、魚市場では魚の保存や運搬のための氷が必要とされていた。そこで、まずは食用氷の製造販売として開業。
その後、一般家庭への冷蔵庫の普及とともに食用氷の需要は徐々に減退したが、豊富な農産物を誇る田主丸という土地柄、今度は野菜やフルーツを一時保管するための冷蔵倉庫としてのニーズが高まっていった。
昭和50年頃からは倉庫を建て増していき、今では冷凍庫容積約10,000㎥、冷蔵庫容積約2,500㎥にまで拡大。農産物の貯蔵からスタートした倉庫業だったが、現在では食料品の原料や冷凍食品、輸入畜肉など、幅広い品種を取り扱っている。

技術や知識の源泉は、長年の経験にあり!

独自の保管技術で、農産物に付加価値をつける
野菜やフルーツの冷蔵保存は、その管理が難しい。人参やゴボウは低温保存が不可欠だが、同じ温度で保存すると葉物野菜は凍ってしまう。種類ごとに保存に適する条件が異なり、温度や湿度を徹底的に管理する必要がある。
さらに田主丸地域は果物の一大生産地だけに、ブドウ・柿・梨・イチゴなど、さまざまなフルーツが集まってくる。水分が多く、繊細なフルーツの取り扱いには、さらなる注意が必要だ。 長年、多品種のフルーツを保管してきた「両筑製氷冷蔵」だが、その真骨頂は柿の保存で発揮される。柿は−1°C〜0°Cと保存できる温度帯が狭く、+1°C以上では腐り、−2°C以下では凍ってしまう。
たった1°Cの温度帯を維持しなければならず、保管条件はかなり厳しい。しかし適切に管理できれば11月〜2月までの長期保存が可能となり、時季をずらして出荷できる。
冬場、とくに正月の柿には付加価値がつき、デパートなどでの販売では高値がつく。「両筑製氷冷蔵」の知識や技術が、柿に新たな価値を与えている。

複雑化する流通に、技術・知識・設備で挑む
冷凍食品などの低温加工食品市場の拡大とともに、メーカーからは少量多品種の商品が持ち込まれるようになった。
流通の高速化により在庫回転は速くなり、賞味期限があるためLOT番号により製造日だけでなく製造時間帯までを細かく管理。
またトレーサビリティの観点から、製造日時に加え、製造ラインまでを区別して管理する。 消費者の食の安全に対する意識の高まりとともに、メーカーから要求されるレベルも高まり、システムは複雑化していく。
この流通の高速化、少量多品種化に対応するため、「両筑製氷冷蔵」では長年に渡り、技術や知識、設備に磨きをかけてきた。保管管理や流通ノウハウは、一朝一夕には築けない。
複雑化し続ける流通には、長年の経験による技術や知識、設備の蓄積が欠かせないのだ。




小規模事業者持続化補助金を申請しようと思われたきっかけは?

うちに果物を預けてくれている農家さんの売れ残りが、年々増加していっています。「果物のロスをどうにかしたい」。そう思っていたときに、昔から付き合いのある柿農家さんから柿のドライフルーツをもらったんです。「食べてみらんね」ってもらったんですが、それがすごく美味しくて。「これだ!」と思いました(笑) ドライフルーツを作るには乾燥機の導入などが必要になるので、それを指導員さんに相談していたところ、補助金の申請を勧められました。 設備を導入するにあたっての実際の進め方など、いろんなことを親身になって考えてくれました。

小規模事業者持続化補助金の計画内容

Q.事業の内容は?
「田主丸産フルーツを使った6次産業化支援事業」を考えています。
顧客の農家さんから売れ残りの果物を仕入れ、当社でドライフルーツに加工します。規模が小さい農家さんが単独で加工するにはコストがかかりすぎるため、当社で一括して加工・販売することで、6次産業化支援を行っていきます。 田主丸ではさまざまなフルーツが収穫でき、収穫時期も種類によって異なるため、年間を通していろいろなドライフルーツを作ることができます。まずは福岡県でも有名な田主丸産の柿や梨、イチジクなどの加工から手がける予定です。試作では、柿・イチジク・梨・モモ・リンゴ・トマトと、いろいろな種類を試しました。 天日干しにしたものを、味付けも何もせず、乾燥機で水分だけを抜く。保管と同じで、それぞれの果物により干す時間や機械にかける時間が異なるため、今でも試行錯誤の連続です。
完成したドライフルーツは、当社にフルーツを収めてもらった農家さんの観光農園で販売してもらうとともに、近隣の道の駅でも販売していく予定です。

Q.将来の展望は?
当社が作るのは、安心安全な無添加のドライフルーツです。地元農家さんのフルーツを使っていることを全面的に押し出し、食の安全に敏感な方々にアピールしていくつもりです。
“田主丸産”、“無添加”をキーワードに、ワインのつまみにもなる高級志向の商品を目指しています。
また、年中ドライフルーツができるのも、当社の強みです。豊かなフルーツの里・田主丸ならではの、バラエティに富んだ商品展開を計画しています。

小規模事業者持続化補助金の活用により期待できる効果

じつは、この事業を始めるきっかけにもなった柿農家さんから乾燥機を譲っていただくことになり、持続化補助金は途中で辞退しました。乾燥機の購入だけでなく、商品化にあたってのオリジナルパッケージやパンフレットの作成なども考えていましたが、メインの用途が乾燥機の購入だったので…。 パッケージなどについては、今後また相談させてもらおうと思います。

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地元と二人三脚!これからも続く、地域密着の商品づくり
当社はもうすぐ創業80年、これまで地元に密着した事業を行ってきました。地元には80年分の恩があり、今後も地域に貢献していきたいと考えています。
今回の事業も、農家さんとのつながりがあってこそ。売れ残りもですが、果物は傷があったら売り物にならず、ロスが大きい。ドライフルーツなら傷のある部分だけを取り除いて使えます。
農家さんは売れ残っていた果物や規格外品を販売でき、当社としても果物の青果保管のほかに加工用原料保管としての保管量が増える、win-winの関係です。
これからもドライフルーツで終わることなく、ジャムや、フルーツを丸ごと凍らせるアイスなど、いろんなものにチャレンジしていきたいですね。

地元を越えて、地域のため、県のため…
田主丸町内で地元のために活動するグループを結成しているんですが、平成27年の九州北部豪雨の際には、そのグループでで杷木地区に行ってきました。
最初は、うちから食用氷を提供していたんです。とにかく暑い中での復旧作業が続くのに、支援物資の飲み物などがぬるいんですね。そこで氷が必要だということで、軽トラックに山積みで毎日3回ほど、社会福祉協議会の方が被災地区に運んでいました。
そのご縁もあって、杷木中学校や消防団、それからボランティアの方々が集まる駐車場に行って、かき氷を振舞ってきました。「炊き出しは衛生的に難しい」と言われてかき氷にしたんですが、被災者の方々からはものすごく喜ばれました。
この活動により、福岡県と冷蔵倉庫協議会・冷凍事業協議会との間で、災害協定が結ばれました。
もともと保管業界は、貯蔵庫・備蓄保管庫として重要な物資の供給基地という役割を担っています。この協定を機に、県の防災に役立てるのは嬉しいですね。