刺身こんにゃくはスイーツだ! 専門店にしか出せない衝撃の新食感“とろりんつるりん”
- みのう屋
- 福岡県久留米市田主丸町上原290-8
- ■代表者: 古賀 德幸
- ■創業: 平成30年10月10日
- ■補助金採択日: 令和2年5月22日
- ■TEL: 0943-88-9007
- ■支援内容: 小規模事業者持続化補助金
蒟蒻専門店という覚悟
「みのう屋」は蒟蒻の専門店で、その主力商品は「刺身こんにゃく」。決して大きな市場ではないが、そこには「自分にしか作れない商品を作りたい」という古賀さんの熱い想いが見て取れる。
もともと佐賀県の吉野ケ里に「味善」という人気の蒟蒻店があり、古賀さんの母親がその店の大ファンだった。蒟蒻を買いにわざわざ佐賀まで行くほどだったが、その味善が閉店することになり、古賀さんがその製法を受け継いだ。
今では、味善で学んだ製法をベースに独自の研究を重ねつつ、耳納山系の清冽な地下水に恵まれた田主丸で蒟蒻専門店を営んでいる。
みのう屋の刺身こんにゃくが出来るまで
古賀さんの蒟蒻づくりの最大の特長は、凝固剤に藁灰の灰汁(あく)を使うこと。通常、凝固剤には水酸化カルシウムの粉末を使うが、これでは特有のカルシウム臭がしてしまう。そのため古賀さんは、昔ながらの製法にこだわり、凝固剤として藁灰の灰汁を使用する。
しかし、藁灰の灰汁を抽出する作業は簡単なものではない。秋になると地元農家から藁をもらい、天日干しで数日かけて乾燥させる。次に藁を燃やして藁灰にし、この藁灰を水につけ込む。最後にフィルターで藁灰を濾せば、藁灰の灰汁が抽出できるというわけだ。秋に1年分の藁を確保しておき、年間を通して、週に一度はこの工程を繰り返す。
作業には半日ほどかかり、決して楽なものではない。しかし、藁灰の灰汁を使った蒟蒻はカルシウム臭がしないだけでなく、“とろりんつるりん”という通常の蒟蒻にはない、衝撃の新食感を生み出すのだ。
補助金の活用について教えてください
うちの刺身こんにゃくは、通常の蒟蒻とは食感がまったく違います。その食感を知ってもらうため、「刺身こんにゃくの新しい食べ方の提案による集客強化」を図ることにしました。
リーフレットを作成し、まずはスイーツとしての食べ方を提案しました。黒蜜やきなこをかけたヘルシーなスイーツなら、普段あまり蒟蒻を食べない若い人にも興味をもってもらえるのではないかと思ったからです。また、リーフレットには、刺身こんにゃくにカラフルな野菜を合わせたサラダ料理も掲載しました。日頃、お客さんから「どう料理すれば分からない」という声を多くいただいていました。蒟蒻は一般的な食材ですが、料理となると煮物しか思いつかないと。そこで、気軽にサラダなどに取り入れていただけたらと思ったのです。こちらも見た目がカラフルで、若い人の興味を引くと思います。
固定概念を覆せ!刺身こんにゃくはスイーツだ
うちの刺身こんにゃくは、ちょっと分厚めに切っていただくのがオススメです。箸でつまむとトロンと伸びて、通常の刺身こんにゃくとの違いがお分かりいただけると思います。ちょっとタピオカにも近いんです。それで、スイーツとして食べても美味しいのではないかと思いつきました。醤油や酢味噌だけでなく、黒蜜やきなこと合わせてもらいたい。びっくりするほど違和感なく、スイーツとして食べていただけると思います。アイスに合わせても美味しいですし、濃い目のコーヒーに漬け込んでいただくと、プルンプルンのコーヒーゼリーになります。
ちょっと信じられないかもしれませんが、実際に試した人が「美味しかった!」とSNSに投稿してくださいました。常連さんに黒蜜やきな粉を付けて食べてもらったときも評判は上々でした。お客さまの反応をみて、自分のアイデアが間違えてなかったなと。これからも蒟蒻の固定概念を壊して、新しい食べ方を提案していきたいと思っています。
食べた人にしか分からない!衝撃の食感
正直、蒟蒻に味はないと思っています。とくにうちの刺身こんにゃくはカルシウム臭もないし、風味とか味がほとんどない。食感で勝負です。
また、味や風味がないからこそ、他の食材を加えた場合、その食材の味が分かりやすいというメリットもあります。日頃、蒟蒻を食べない人に興味を持ってもらえるよう、うちではプレーンのほか、青のり・柚子・生姜・よもぎ・唐辛子など、いろいろな味のバリエーションを開発しています。
うちの刺身こんにゃくはJAの直売所やスーパー、地元の飲食店さんにも卸しています。とくにJAの直売所で試食販売を行った際には、通常1日10個ほど売れる刺身こんにゃくが、その日持ち込んだ50個すべて完売となりました。皆さんに「美味しい」「こんなの初めて食べた!」と言っていただくことができました。とにかく食べていただきたい。食べた人には必ず分かっていただけると思っています。
また、最近ではこんにゃく芋から作る「生芋こんにゃく」も人気です。丸みを帯びた大きな蒟蒻と、そのまま料理に使える玉こんにゃく。刺身こんにゃくと違って日頃の料理に使えるため、皆さまお気軽にご購入いただいているようです。
こだわりが止まらない!栽培にもチャレンジ
一昨年からこんにゃく芋の栽培にもチャレンジしている古賀さん。もともと畑違いの業種から蒟蒻の製造・販売を始め、効率的な製造法には目もくれず、自分が心から美味しいと思えるものだけを作っている。
製造法にこだわるだけでなく、今やこんにゃく芋の栽培まで…。古賀さんのこだわりは留まる所を知らず、それこそが「みのう屋」をオンリーワンの存在にしている。