世界に類を見ない充填技術・検査技術でオーダーメイドのものづくり
- 株式会社 IPO
- 福岡県久留米市田主丸町石垣1365-1
- ■代表者: 秋山 恵利
- ■創業: 平成19年5月9日
- ■補助金採択日: 令和2年7月22日
- ■TEL: 0943-72-5500
- ■支援内容: 補助金活用
世界に類を見ない充填技術
飲料充填装置の大手メーカーをもしのぐ、1分間1600ボトルの充填技術を持ち、かつ、世界最高レベルの脱酸素技術で特許も取得している、装置・検査機メーカー「株式会社IPO」。2007年の創業以前から検査機を主力に製作し、液体窒素充填装置の開発・特許取得をきっかけに「株式会社IPO」を設立した。
液体窒素充填装置とは、身の回りにある食品・飲料の長期保存を可能にする技術だ。カギとなるのは液体窒素を使った脱酸素技術。飲料や食品が充填されたペットボトル・缶容器の中に酸素が残っていると、細菌が繁殖してしまう。できるだけ長く保存するには、この酸素量をどれだけ減らせるかが重要なのだ。国内の大手飲料メーカーでは酸素量を1%以下に設定しているところを、「株式会社IPO」の装置を使うと、0.3%以下に抑えることができる。しかも、パッケージの検査装置も製作しているため、充填・検査の一連の作業において、安心・安全な商品生産が可能になるのだ。
物理学者と共に歩んだ開発の道
同じ液体窒素を使う充填機メーカーはあっても、これほど酸素量を減らせる技術は同社にしかない。物理学者(現・株式会社IPO会長)と共に開発に5年をかけ、完成と同時に国内外で特許を取得した。現在は、国内の充填生産ラインを請け負う企業3社のうちの1社に数えられる。「他者は事業規模3000億円と、規模が全然違います」と設立に関わった秋山恵利さんは謙遜されるが、それでも、他2社よりも秀でた技術を持つ企業が田主丸町にあるのは間違いない。事実、入札でもスピード・機械の性能の両面で、「株式会社IPO」の装置が選ばれることが多いという。
しかも、もし生産ラインが故障で止まったとしても、24時間受付で修理にかけつけるという。それが他社の装置であっても、飲料メーカーの方が困っていれば手助けをする。そんな対応力と、そもそもの技術力もあって、飲料メーカーの機械の更新時には「次はIPOの機械を」と、直接の取引も増えた。現在は他の食品メーカーと共同で、さまざまな長期保存食品の開発(OEM)も手がけているほか、メーカーからの声かけで、海外の工場で使う装置も卸すなど、事業を多岐に展開している。
補助金申請のきっかけは?
コロナ禍でがらりと変わった仕事の進め方
国内外の出張がなくなったものの、リモートでなんでも解決できたことから、「行かなくても仕事ができるんだ!」とわかったのが収穫でした。ただ、リモート会議の場合、一般的なWebサービスでは通信環境やセキュリティの面で不足を感じていました。
コロナ禍は多いときで10人程度のリモート会議をしていたのですが、画像が見えない、図面が見えないといった不具合は何度も起きていました。しかも、音声が聞こえないこともあって、会議中に「聞こえますかー!」と大声を張り上げたこともあったのです。恥ずかしいものでした。リモート会議は画像と音声が鮮明な設備をきちんと整えておかないと、不便ですし相手にも失礼です。それに、このコロナ禍で当面は対面での商談は難しいと思っていました。営業力を強化するためにも、高度な暗号化にも対応したWeb会議システム・Webexを導入することにしたのです。
補助金でWebexを導入した結果は?
Web会議システムを導入することで、手軽に商談を行えるだけでなく、頻度も増加させることが可能です。また、新規に開発した装置のPRやデモンストレーションなども、ユーザーや取引先が当社までわざわざ足を運ぶ必要もなくなり、PRの機会は増えると考えました。
実際に導入してからは、リモートでできることが増えたため、これまでの出張にかかっていた飛行機代、宿泊費、食費がなくなり、時間のロスも減少。対面でなくてもWebで十分に商談や会議ができるのが証明されました。実際のところ、営業力はコロナ前程度まで戻ってきています。さらに、テレワークの環境も整えることができ、業務の効率化につながりました。「装置を直接見たい」とおっしゃるお客様には従来通り、工場を案内しますが、今後はリモートでできる営業・商談が増えていくとみています。
海外とのやり取りもWebに変わり、今後の展開は?
メーカーと共同でアジアでも展開
補助金の認可が下りるには、元となるアイデア、品質の高い商品、今後の事業展開がしっかりしていることが重要だと田主丸町商工会から聞きました。その品質の高い商品=装置が当社にはあり、生産効率・安全性の面で見ても、世界でもトップレベルの装置の開発が可能です。今はリモート会議の環境も整ったので、今後は海外での展開も考えられます。
事実、某飲料メーカーからの声かけで、インドやアフリカの工場にも装置を搬入することが決まりました。これからは国内と同様、アジアをにらんで、装置の開発・事業展開を手がけていきます。
装置づくりを通し、お客様の希望を叶える
「株式会社IPO」の装置は、ほぼオーダーメイドだ。納品場所や広さによって形が違ってくるため、上からの吊り下げ型や、下からの持ち上げ型とお客様からの要望に合わせて毎回製作している。さらに、どのような製品の何を検査したいかによっても、装置は変わってくる。缶、ペットボトルなど容器はさまざま、容器を叩く検査、内圧の検査、音の検査など方法も多岐にわたる。それを、お客様の希望を叶えるべくつくりあげるのだ。
同社には、社名の由来になった“一歩先”の技術、世界で初めての技術がある。国内外の特許を取得した液体窒素充填装置に続き、検査機も世界の特許を取得した。同社での装置開発は、職人のものづくりに通じる試行錯誤の積み重ねであり、一つ一つが唯一の製品づくりである。今後は、これらの装置を国内外に向けてPRし、販売していく。