オートミールの加工販売に参入 新たな市場開拓に挑む

株式会社山川食糧
久留米市田主丸町秋成1番地
■代表者: 山川訓央
               
■補助金採択日: 2022年9月15日

事業内容

1963(昭和38)年創業、1983(昭和58)年設立。全国から集荷された米を主食用、加工食品の原料用として精米加工を行うほか、2023年からは美容やダイエット食として注目されるオートミールの製造販売も開始。自社で精米加工した米を使った飲食店経営も手掛けるなど、さまざまな形で日本の食を支えている。

About us 会社概要

精米加工の老舗企業、健康市場に進出
山川食糧は1963(昭和38)年の創業以来、主食用米のほか米菓・みそ・酒造など各メーカーに向けた加工用米の精米・卸売を手掛けてきました。田主丸町の吉井工業団地内にある36,630㎡の本社敷地内に精米加工ライン、保管用の各種倉庫を構え、長らく精米の安定供給に努めてきました。
ただ米の消費量は長期的に減少が続いており、さらにコロナ禍では外食・飲酒の機会減少などの影響を受けて加工米の出荷量も大きく落ち込みました。そのため近年は新たな収益源の創出が課題となっていました。
そのヒントは身近なところにありました。関連会社でナッツなどの製造・卸・通販を手掛ける「ヘルシーアーモンド」は2020年からオートミールの輸入卸をしていました。〝高タンパク低カロリー〟で知られるオートミールは、コロナ禍の外出自粛や在宅勤務などによる運動不足で高まった健康志向、さらにダイエットや筋トレブームにも乗って予想以上に引き合いが多く、出荷量は年間240トンにまで達しました。
オートミールは「オーツ麦」を食べやすく加工したシリアル状の食品。たんぱく質は白米の2倍以上で、食物繊維や鉄分も豊富とされます。ご飯やお粥、パンにそのまま混ぜてもよし、白米と混ぜて炊き上げた「オーツ麦ごはん」としてプチプチとした食感が楽しむもよし。ヨーグルトや焼き菓子などに混ぜて食べることもできます。

原料を輸入して自社で製造・販売へ
同社は「オートミールの需要増は一過性のものではなく、市場に定着している」と判断。商品ではなく原料(オーツ麦)を輸入して、自社でオートミールの製造・販売に乗り出すことにしました。
輸入品よりも鮮度・品質の高さで、市場優位性を確保できるという見通しもありました。実際、ヘルシーアーモンド社の取引先のうち輸入品のオートミールを使っていた企業に切り替えを打診したところ、よい反応が返ってきました。一般消費者向けには問屋を通してスーパーや小売店への販路が確保できていたほか、新たにインターネット通販での販売も計画。すでにヘルシーアーモンド社でナッツなどをネット販売の実績があったため、そのノウハウを活用しながら直販することにしました。




Business restructuring 事業再構築補助金

・事業計画
オートミールを自社で製造するには加工工場を新設する必要があるほか、自動梱包機・挽き割り機・ふるい選別機・石抜機などの機械設備を揃える必要がありました。その投資額は億単位となるため、銀行などからの資金調達が不可欠でした。

・田主丸町商工会の果たした役割
資金調達に向けては自己資金や銀行からの借り入れのほか、コロナの影響を受けて事業再構築に取り組む事業者を支援する「事業再構築補助金」の交付申請を行うことにしました。補助金申請にあたっては認定支援機関から事業計画書の確認を受けることが条件の一つとなっていることから、田主丸商工会へ書類確認・アドバイスを依頼しました。

・補助金の使途
工場内作業所の改修費、自動梱包機、挽き割り機、ふるい選別機、石抜機など機械設備の購入費の一部として活用しました。

Future その後の展開と未来への展望

「オーツ麦ご飯」が好評
加工工場は2023年5月に完成し、オートミールの製造を開始しました。「山川食糧オートミール研究所」の名称で出店した楽天市場では着実にリピーターを増やしており、新規登録した久留米市のふるさと納税返礼品も2024年度だけで、すでに約13万食分が選ばれています。
2024年からは、オーツ麦を米に混ぜて炊く「オーツ麦ご飯の素」の販売を開始。〝もちっと、ぷちっとした食感〟が人気を呼んでいます。
現場統括責任者の山川勇希次長は、「オートミートは栄養価が高く、食物繊維も豊富で体にいいことが分かっていても、味や食感が苦手で食べ続けられない人も一定数いました。どうすれば毎日無理なく食べてもらえるか考え、麦ご飯のような感覚で白米と一緒に食べてもらうのが一番いいと思いました」と開発の背景を語ります。
「試行錯誤の末に、米に馴染む大きさにオーツ麦を加工することができました。プチプチした食感が残るうえ、麦の香ばしい良い香りが残って食後のくどさもない。これまで『オートミールは苦手』と言っていた人たちに食べてもらうと、『これなら毎日食べられる』と言ってもらい、商品化に踏み切りました」

オートミールを使った新商品開発も
一方、業務用オートミールはこれまで輸入品を使っていた製粉会社や精麦会社などの取引先で、同社製品への切り替えが進んでいます。ただ、オートミールを業務用として使っている会社はまだ少ないため、販売量を増やしていくためには新たな用途を提案していくことが必要です。
「そもそもオートミールとは、というところから提案を始めることも多いです。クッキーなどのお菓子と混ぜる、揚げ物の衣やパン粉の代わりとして使う…オートミールは本当に用途が幅広いので、どこにニーズがあるのか我々も提案をしながら模索しています」
少しずつ、オートミールを使って新商品を開発してみたい、という声も出てきました。ある酒造メーカーでは「オーツ麦を使ったお酒」の試作を行っています。
健康に良く、使い勝手のよさもある可能性を秘めた食品。アイデア一つで大きな成長が見込めるだけに、今後の展開が注目されます。