地元食材を使った洋菓子店を出店、「田主丸土産」として広めたい
- 株式会社アンダンテ
- 久留米市田主丸町田主丸455-42
- ■代表者: 岩佐ちえみ
- ■補助金採択日: 2023年6月29日
- ■TEL: 0943-72-4929
事業内容
保存料・香料・ペクチン(増粘剤)を使用せず、砂糖の代わりにイソマルオリゴ糖やフラクトオリゴ糖を用いた手作りジャムをPB、OEMで製造・販売する。砂糖不使用のため虫歯になりにくく、糖度約45度と低糖度なので健康志向の方やダイエット中の方にもオススメ。2025年からは新規事業として地元食材を使った洋菓子店を出店している。
About us 会社概要
成り行きで始めたジャム作り、縁が縁を呼んで…
プリザーブドフラワーの仕事を個人で請けながら、歯科衛生士として夫の経営する歯科医院をサポートしてきた岩佐さんがジャムに関わるようになったのは、ジャム作りの場所を探していた知人に自宅のキッチンを提供したことがきっかけ。知人の作るジャムが少しでも広がればと、周りの人たちに「ジャムが欲しいという人がいたら教えて」と声掛けをしていました。「ジャムが欲しいというパン屋さんがいる」と紹介を受けたのは、知人がジャム作りを辞めたあとのこと。今さら断ることもできないと、岩佐さんがジャム作りを引き継ぐことになりました。
「どうせなら、自分にしかできないジャムを作ろう」。歯科衛生士の知見を生かし、虫歯になりにくいようにと砂糖の代わりにオリゴ糖を用いたジャム作りを開始。百貨店の催事に出品し、道の駅など販売委託先も増え、少しずつ販売量を増やしてきました。
新型コロナ感染拡大の影響で販売委託先から戻ってきた返品の山を前に、途方に暮れた時期もありましたが、新たな販路を求めてネットショップを開設したところ、東京の食品製造会社や大阪のパン屋などの目に留まりOEMの依頼が舞い込むように。提供したジャムは新宿高島屋などの催事で好評を博し、その販売量はコロナ前を大きく上回っています。
ジャムの種類は20種類まで増加
2022年には長男の浩太郎さんが入社。「それまでは感覚的にジャム作りをしてきましたが、息子の助言で分量や時間などを細かく数値化・基準化し、ジャムの品質が安定するようになりました」と岩佐さん。福岡県などが主催する食の展示会「Food EXPO Kyushu」に出展したことが契機となって外資系ホテル向けのOEM生産も始まり、一般客からの問い合わせも増えています。
ジャムの種類も果物系、蜂蜜系、ミルク系など約20種類に増えました。一番人気は「あまおういちごのコンフィチュール」。商品が支持されている理由について岩佐さんは、「砂糖を使っていないジャムは非常に珍しいからではないでしょうか」と推察しています。「ペクチンを使わず時間をかけてとろみを出しているため、果実本来の味も楽しめます。原価も高く手間もかかるぶん一般のジャムより値段は張りますが、健康志向も追い風となって私たちのジャムが受け入れられていると感じています」。
Business restructuring 事業再構築補助金
・田主丸町商工会への相談のきっかけ
歯の治療に来ていた患者さんとの雑談のなかで「どうすればジャムが売れるか」という話題になったところ、「商工会に相談してみては」と紹介されました。それをきっかけに2019年に別の案件で補助金を申請することができました。店舗を出すことも以前から相談していたのですが、コロナ禍でそれも中断していました。
・支援内容と成果
事業再構築補助金の申請に向けた書類作成は浩太郎さんが中心となって行いました。計画書の内容は指導員に細かくチェックをしてもらって修正・加筆を重ね、半年ほどかけて仕上げました。「採択率も低いし難しいだろう」と期待はしていなかったものの、思いがけず採用されました。
・経営革新計画書に基づいた取り組み
補助金は店舗の建設費、業務用オーブンや材料保管用の冷凍庫など購入費の一部に充当。「初期投資が大きいためなかなか出店に踏み切ることができませんでしたが、補助金申請が通ったことで一気に出店に向けて動き出すことができました」。
Future その後の展開と未来への展望
国道沿いに実店舗を出店
「田主丸にはお土産を扱う店が少ないため、お客さんが近隣の自治体に流れている」。そのことを商工会の担当者から聞いた岩佐さんには、「田主丸のお土産を扱う店を出せないか」という思いがずっと頭の片隅にありました。ジャムの卸売や小売が軌道に乗り、浩太郎さんという頼れる存在を得たことで、改めてその思いを強くしました。ただ、出店となると大規模な設備投資が必要になるため、その一部を補助金で賄えないか商工会に相談。必要書類の作成は浩太郎さんに一任しました。
「経験を積んでほしかったですし、今後の経営ビジョンを一度整理する機会にもなるだろうと考え、挑戦してみなさいと背中を押したんです」
申請が採択され、自宅に隣接する国道210号沿いの所有地に店舗を建設。販売する商品は地元の果物や野菜、米粉を使ったタルト、パイ、カステラなど洋菓子のほか小さなハンバーガーを予定しています。もちろん各商品に自社のジャムも使っていきます。地元の食材を使うことで「田主丸土産」としての認知を高めていくことが目標です。
いろいろなジャムの楽しみ方を広めたい
この数年を振り返って岩佐さんは、「取引先などからいただく要望に対して、難しいと思ってもチャレンジすることで多くのOEM・PB商品が生まれてきた」と語ります。「ジャムはパンだけでなく、いろいろな料理と相性がよいことも改めて感じています。刺身につけるとカルパッチョのような食感を楽しめますし、野菜につけてもおいしいので総菜用にキノコを使ったジャムも作る予定です。幅広いジャムの使い方を知ってほしいので、情報発信にも力を入れていきたいです」。
ジャム作りを始めた当初は数日掛けてようやく瓶5個のジャムが完成していましたが、今では1週間で1500個を作るまでになりました。「会社を設立した時、音楽をしている主人から〝慌てて事業を広げるのではなく、アンダンテ(歩くようなテンポ)のペースでやってみたら〟と言われて社名をアンダンテにしたのですが、今はもうアレグロ(速いテンポ)になっていますね」。そう言って岩佐さんは微笑みました。